グロービートジャパン(らあめん花月)・日本平和神軍事件で、本日、無罪判決が出ました。紀藤が主任弁護人として携わってきましたので、感慨無量です。
市民はマスコミのようにお金も力もありません。当然そこで発信される表現は、マスコミのように金をかけた取材力とは到底異なるものです。従来の名誉毀損基準では、市民の批判的表現は、ことごとく名誉毀損となりかねません。それでは表現の自由は死滅してしまいます。
判決は、この市民の置かれた現状に真摯に向き合い、そして表現の自由の重要性に理解を示したもので、画期的な判決です。
ニュースでもいくつか速報が出ていますが、本日うるう年のうるう日2008年2月29日が、市民のインターネット上の表現の自由が守られた記念日となりました。
ただ小倉秀夫弁護士のような理解と評価もあると思いますので、念のため確認しておきますと、今回、判決が、従来基準での真実性と相当性を認めなかった点は、紀藤としては、とても残念だと考えています。記者会見でも当然に不満を述べました。この点は、今日の東京新聞がわりと正確に報じています。→http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008030102091689.html
相弁護人の山口もブログで同様の意見を述べています。→http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2008/02/post_1756.html
それでも今回の判決は、それでも市民の表現の自由を重視したと言う点で、画期的です。
もちろん問題点も残っていますので、検察官から控訴されれば、当然に争っていくことになります(ちなみに無罪判決に対しては、被告人側は控訴できません)。
左から紀藤、橋爪研吾さん、山口貴士弁護士
・ネット中傷に無罪判決 『確実な根拠、個人は不要』東京地裁 (東京新聞) 2008年3月1日 07時07分
インターネットのホームページ(HP)でラーメン店のフランチャイズ運営会社を中傷する書き込みをしたとして、名誉棄損の罪に問われた会社員橋爪研吾被告(36)の判決公判が二十九日、東京地裁で開かれた。波床昌則裁判長は「ネットの個人利用者に要求される程度の情報収集をした上で書き込んだ。直ちに名誉棄損罪に問うことは相当でない」として、無罪(求刑罰金三十万円)を言い渡した。
判決は、個人利用者がネット上で表現行為をする場合の名誉棄損について「主に公益を図る目的ならば、(メディアとは異なり)確実な資料や根拠に基づかなくても、その事実が真実だと誤って信じた場合には罪に問われない」との初めての基準を提示。その効果として「自己検閲により委縮することなく、憲法二一条(表現の自由)が確保される」と示した。
弁護人の紀藤正樹弁護士によると、ネットをめぐる名誉棄損事件での無罪判決は初めて。ネット社会の現実を見据えた判断といえ、今後の司法判断や社会活動に大きな影響を与えるとみられる。
波床裁判長は「被告による書き込みは、重要部分が真実であったとは証明されていない」と認定。メディア報道なら有罪になる可能性を指摘した。
その上で、判決は(1)ネット利用者は相互に送受信でき、書き込みに対して被害者は反論できた(2)メディアや専門家が従来の媒体を使った表現とは対照的に、個人がネット上で発信した情報の信頼性は一般的に低いと受け止められている(3)現代社会では(個人が)公共の利害に関する事実について真実性を立証するのは困難-などと指摘した。
今回の書き込みに対し、フランチャイズ運営会社側が二〇〇三年に橋爪被告を相手取り起こした民事訴訟では、〇五年に同被告の敗訴が最高裁で確定していた。
橋爪被告は〇二年十-十一月の間、被告が開設したHP上で、飲食店「ニンニクげんこつラーメン花月」をフランチャイズ運営する会社について、カルト集団と関係があると中傷する内容の文章を書き込んだとして在宅起訴された。判決は、同集団と会社の関係について「緊密な関係にあるとは認められない」とした。
東京地検・渡辺恵一次席検事の話 判決内容を子細に検討し、適切に対応したい。
■『表現の自由』強く意識
解説
インターネット上の書き込みについて名誉棄損罪を認めなかった二十九日の東京地裁判決は、ネット上の表現行為が法律に抵触する場合の基準について、メディアと個人利用者を峻別(しゅんべつ)し、メディアに比べて個人の責任は緩和される、との判断を示した。
司法はこれまで(1)公益目的(2)確実な資料や根拠に基づくこと(3)その事実が真実だと信じるだけの理由-の三点がなければ有罪としてきた。これは発信者がメディアの場合が前提で、今回の判決は(2)がなくても「個人に求められる水準を満たす調査」をしていれば罪に問われないと判断した。
特筆すべきは、判決が、憲法が保障する「表現の自由」に踏み込んだ点だ。責任の緩和がなければ、個人は訴訟の被告になったりすることを恐れ、言論活動が鈍ることに言及、「自己検閲による委縮」を懸念した。
情報の発信者の多くがメディアに限られていた時代とは異なり、ネット社会は誰でも自由に発信できるようになった。一方、匿名性に隠された過激な中傷は、メディアによる批判以上に人を傷つけることがある。
責任の緩和と言っても、好き放題に書くことが許されるわけではない。それを許せば個人がネットで発信した情報の信頼性を低下させることになり、法規制につながる恐れがある。
今後、判決が司法の場で追認されていくか注目されるが、ネット社会に生きる市民としての自覚が一人一人に求められている。 (社会部・寺岡秀樹)
・ネットでラーメン店を中傷、名誉棄損問えず…東京地裁 (2008年2月29日21時39分 読売新聞)
インターネットのホームページ(HP)で、外食店の経営会社を「カルト集団」などと中傷したとして、名誉棄損罪に問われた東京都大田区の会社員、橋爪研吾被告(36)の判決が29日、東京地裁であった。波床昌則裁判長は「ネット上の個人の表現行為については、従来の名誉棄損の基準を適用すべきではない」との判断を示した上で、「内容は事実ではないが、ネットの個人利用者として要求される程度の調査は行っている」と述べ、無罪(求刑・罰金30万円)を言い渡した。ネット上の名誉棄損について寛容な姿勢を示す新判断で、議論を呼びそうだ。
判例では、事実に反し名誉を棄損しても、内容に公共性・公益性があり、加害者が真実と信じるだけの「確実な根拠」があれば罪にはならないとされてきた。
判決はまず、HPの記載内容について「確実な根拠はなく、従来の基準では有罪になるとも考えられる」とした。一方で、「ネットでは被害者が容易に反論できるほか、個人が掲載した情報の信頼性は低いと受け止められている」と、ネットの特殊性を指摘。従来ほど厳格な基準を当てはめるべきではないとし、〈1〉わざとウソの情報を発信した〈2〉個人でも出来る調査も行わずにウソの情報を発信した――場合に名誉棄損罪を適用すべきだ、と述べた。
橋爪被告については、経営会社の登記や雑誌の資料を集めるなど「ネットの個人利用者に求められる程度の調査を行った」とし、無罪とした。弁護人の紀藤正樹弁護士は「ネット上の個人の書き込みについて新基準を示した画期的判決」と評価した。橋爪被告に対しては名誉棄損訴訟も起こされ、橋爪被告に77万円の支払いを命じる判決が確定している。
渡辺恵一・東京地検次席検事の話「判決内容を詳細に検討し、適切に対応したい」
・NHK ”ネット名誉棄損”無罪判決 2007年2月29日 18時31分-今なら映像が見れます。
東京・大田区の会社員、橋爪研吾さん(36)は、6年前、みずからのホームページで東京の外食チェーンの会社がカルト集団と関係があると中傷したとして、名誉棄損の罪に問われました。判決で、東京地方裁判所の波床昌則裁判長は「書き込みの内容は事実ではないが、一般の人が関心を持ちうることについて情報収集をしたうえで事実と思って書いていた。会社も十分な反論をしなかった」として無罪を言い渡しました。この事件をめぐる民事裁判では、会社の名誉を傷つけたとして77万円の賠償を命じる判決が確定していますが、29日の判決は、刑事責任までは問えないと判断しました。橋爪さんの弁護士によりますと、インターネットの書き込みが名誉棄損にあたるとして起訴された事件で無罪の判決が出たのは初めてだということです。判決について、橋爪さんは「起訴されて3年になりますが、ようやく無罪を勝ち取ることができました。一般の市民の表現の自由を確保した判決でうれしく思います」と話していました。また、橋爪さんの弁護士は「インターネット社会での個人の表現活動について、どういう場合が名誉棄損になるかを示した画期的な判決だ」と話していました。一方、東京地方検察庁の渡辺恵一次席検事は「判決の内容を詳しく検討して適切に対応したい」という談話を出しました
・名誉棄損「ネットは別基準」 書き込みで無罪 東京地裁 朝日新聞2008年03月01日01時59分
インターネット上の書き込みが刑法の名誉棄損罪に当たるかどうかをめぐり、東京地裁は29日にあった判決で「ネットならではの基準で見極めるべきだ」とする判断を示した。波床(はとこ)昌則裁判長は会社員の男性(36)の公判で「男性はネット利用者として要求される水準を満たす調査をし、書き込んだ事実を真実だと信じていたので、犯罪は成立しない」などと述べ、無罪判決(求刑罰金30万円)を言い渡した。
弁護人によると、ネット上の書き込みをめぐる名誉棄損で無罪とされたケースは初めてという。判決は、一般市民が発信でき、情報の信用性の判断も利用者に求められるという実情を踏まえ、ネットを舞台とした「表現の自由」をめぐる新たな判断を示した形だ。
男性は、飲食店グループを経営する企業と宗教団体が一体であるような文章をホームページに記載したとして、この企業に刑事告訴され、東京地検は04年に在宅起訴。並行して、民事の損害賠償訴訟も起こされ、77万円の支払いを命じた敗訴判決が最高裁で確定した。
29日の判決は、書き込みの内容について「同社が宗教団体と緊密な関係にあるとは認められない」とし、真実ではないと認定。真実だと信じた確実な資料や証拠もなく「従来の名誉棄損罪の基準では無罪となることはない」と述べた。
その一方でネット上の表現行為については、中傷を受けた被害者は容易に加害者に反論できる▽ネット上で発信した情報の信頼性は一般的に低いと受け止められている――と指摘。発信者に公共の利益を図る目的などがある場合、「真実でないことを知っていて書き込んだり、ネットの個人利用者なりの調査をせずに発信したりしたときに罪に問われる」とした。
その上で「男性はネットの個人利用者としての情報収集もした上で、内容が真実だと信じていた」と述べ、刑事責任は問えないと結論づけた。
東京地検の渡辺恵一次席検事は「判決内容を詳細に検討して、適切に対応したい」とする談話を出した。
◇
ネット上の「会話」はともすれば感情的になりがちだ。こうしたやりとりの中での書き込みについて、片方を「被害者」として刑事責任を問うことには、専門家の間にも「慎重にすべきだ」との声がある。今回の無罪判決はこうした事情も背景に、結論を導いた。
判決は「メディアなどによる名誉棄損と、ネット上の書き込みの違いは容易に反論ができることだ」と指摘。無罪とされた男性は「数多くの書き込みに対抗するうちに今回の行為に及んだ」とし、「反論を要求しても不当といえない状況だった」と判断した。
男性は判決後、「(書き込み内容は)できるだけの情報収集を行ったものだと自負している。判決は、一市民のネット上の表現の自由を守る基準を示した」。弁護人は「従来の名誉棄損の考え方を、ネット上の表現にそのまま採用すべきではない。名誉棄損に問われるだけでも、市民活動の表現の自由が萎縮(いしゅく)してしまうからだ」と話した。
甲南大学法科大学院の園田寿教授(情報法)は「判決は画期的だ。だが、電子掲示板のように同じ土俵で直ちに反論できるかどうかなど、今回の考え方をどの程度ネット内で適用できるか、さらに議論が必要だ」としている。
・中傷書き込みに無罪=ネット名誉棄損で新基準=「確実な根拠」求めず・東京地裁 2月29日18時31分配信 時事通信
インターネット上でラーメン店チェーン運営会社を中傷する書き込みをしたとして、名誉棄損罪に問われた会社員橋爪研吾被告(36)の判決が29日、東京地裁であった。波床昌則裁判長は、内容に確実な根拠はなかったとしたが、「公益目的で、個人として求められる水準を満たす調査をしていた」として、無罪(求刑罰金30万円)を言い渡した。
ネット上の個人表現について新たな判断基準を示したもので、弁護側は「画期的な判決」と評価している。
橋爪被告は、2002年10月から11月にかけ、ホームページで運営会社について、「右翼系カルト団体が母体。ラーメン店で食事するとカルトの収入になる」などと記載したとして起訴された。
判決で波床裁判長は、書き込みは公益目的と認めたが、同社と団体の一体性や緊密な関係を否定。メディア報道なら有罪となるケースと指摘した。
[参考]
・平和神軍観察会事件
・平和神軍観察会
・日本平和神軍=現Japan Peace Natural Academy
・ラーメン花月(GLOBEAT JAPAN)
・イオンド大学
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