伊調パワハラ問題に対する日本レスリング協会の見解は異常
伊調氏及び伊調氏のコーチの田南部氏に対する、自身の組織の栄コーチのパワハラが問題となっている時に、協会は「パワハラをしていない」という見解を発表することは、世間感覚と、ずれまっくってはいないか。
まず協会がすべきことは、協会が、パワハラに関わっていないと自分の立場を述べることではなく、協会という組織内にパワハラをする人間がいたか否かをきちんと調べて真相を公表し、真実、パワハラがあったということであれば、その予防策を講じることである。
その点に、まったく触れられていない見解にあまりにも驚く。
もともとセクハラやパワハラの概念の発展は、個々の個人がセクハラやパワハラをしているように見えながら、実際には、組織の権力や権限を背景にしてセクハラやパワハラが行われている実態に目も向け、その責任は、個々の個人の問題とするだけでなく、セクハラやパワハラを放置し、容認してきた組織の責任、すなわち使用者責任として、民事の損害賠償責任や差し止めの問題として発展してきたことを全く理解してない。
このような見解を何ら臆面のなく発表する日本レスリング協会に、パワハラをなくす自浄作用がない、と判断されてもおかしくないし、「当協会としては、一刻も早くこの問題が収束し、2020年東京オリンピックでの目標達成に向けて、選手が競技に集中できる環境を整えるべく、全力を尽くしたいと考えております」と事態を傍観することは、これまでも、そしてこれからもパワハラを放置してきた放置責任を問われてもまったくおかしくない。きちんと弁護士などの法律家に相談していないのではないか、とすら思える見解である。
日本レスリング協会は、税金優遇のある公益財団法人として、まさに日本におけるセクハラやパワハラを根絶する先頭にたたなければならないのに、本当に困りものである。
早急に、日本レスリング協会は、自ら主体的に、今回のパワハラ問題の調査に乗り出すべきである。
それすらしないというのであれば、日本レスリング協会の公益財団法人としての資質すら疑われる事態である。
{参考}
■田南部氏、栄氏から脅されていたと告白「伊調のコーチを辞めろ」「ナショナルチームを辞めさせるぞ」/レスリング=サンケイスポーツ 2018/03/01 18:26 http://a.msn.com/01/ja-jp/BBJJx9R?ocid=st)
■日本レスリング協会、伊調馨の告発状に「見解文書発表」=スポーツ報知/報知新聞社=2018/03/01 14:11
日本レスリング協会は1日、五輪4連覇の伊調馨(33)=ALSOK=が栄和人強化本部長(57)からパワーハラスメントを繰り返し受けたとして、レスリング関係者が1月、代理人弁護士を通じ、内閣府の公益認定等委員会に告発状を出していたことについて、報道機関に宛て「一部報道に関する当協会の見解について」という文書を発表した。
以下、全文
現在、伊調馨選手(以下「伊調選手といいます。」)の練習環境等に関し、各種報道がなされておりますが、今後事実とも推測とも判別できない情報が交錯し、選手各位、その他関係者にご迷惑・影響等が生じることを懸念し、日本レスリング協会として、以下の通りコメント致します。
まず、当協会が伊調選手の練習環境を不当に妨げ、制限した事実はございません。同様に、当協会が田南部力男子フリースタイル日本代表コーチ(以下「田南部コーチ」といいます。)に対し、伊調選手への指導をしないよう不当な圧力をかけた事実もございません。
当協会は、田南部コーチを男子フリースタイル日本代表チームの育成・強化を期待し、同チームのコーチに委託させて頂きました。
この点、当協会の強化本部は以下の3チームに区分けされております。
・男子フリースタイル強化委員会(フリーナショナルチーム)
・男子グレコローマン強化委員会(グレコローマンナショナルチーム)
・女子フリースタイル強化委員会(女子ナショナルチーム)
上記各3チームは、それぞれ別の監督、コーチ、トレーナー、選手で構成されており、各チームのスタッフには、自らのチームに所属する選手の育成・強化という責務を全うすることが期待されております。
そうした中で、男子フリースタイル代表の田南部コーチが、各代表チームの垣根を越えて、伊調選手に対する指導を行うことによって、委託の本旨である男子フリースタイルチームの育成・強化が疎かになることのないよう同コーチに対し注意喚起をしたことはございます。
しかしながら、当協会から伊調選手に対する指導を禁止したことや、指導をやめさせるべく田南部コーチやその周囲に不当な圧力をかけたことは一切ございません。
また、当協会として、伊調選手に対し、男子代表合宿への参加を禁止したこともございません。
もっとも、男子代表合宿にあたっては何よりもまず男子代表選手の強化が優先さればならないものですから、伊調選手が男子合宿に参加することによって、男子選手の練習に影響が生じることがないよう、男子合宿に参加して田南部コーチの指導を受ける場合には、男子選手の全体練習終了後に指導を受けるよう伝えたことはございます。
更に、これも当然のことではありますが、当協会が、警視庁レスリング部に対して、伊調選手を練習に参加させないことや、田南部コーチを指導から外すよう働きかけた事実も一切ございません。
最後になりますが、当協会は、日本におけるレスリングの統括団体として、レスリングを発達されることにより、国民の体力とスポーツ精神の向上に資すことを目的とする団体であります。当協会の本分は、選手の育成・強化であり、そのために必要な指導者の育成・選抜、練習環境の整備、各種選手権の実施など、徹頭徹尾「選手のための団体」であります。遡ること、八田一朗会長の時代から、当協会は、理念と哲学を持って選手強化にあたっており、その結果、男子レスリングはフリースタイル、グレコローマン共に日本の名を世界に示し続け、女子レスリングにあっても世界選手権・オリンピックにおいて多くのメダルを獲得する等着実に実績を積み重ねております。
本来であれば、2020年東京オリンピック開催を控え、選手、コーチ及びその他関係者が一丸となって「金メダル」という一つの目標に向かって邁進しなければならないこの時期に客観的事実と異なる報道がなされたことを非常に残念に思います。
当協会としては、一刻も早くこの問題が収束し、2020年東京オリンピックでの目標達成に向けて、選手が競技に集中できる環境を整えるべく、全力を尽くしたいと考えております。
報道機関各位におかれましては、この問題に関する報道によって、選手及びレスリング競技全体に生じる影響を慎重にご検討頂いた上で、適切なご対応を頂きますようお願い申し上げます。
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