大和君置き去りで児童相談所への虐待通告は当然の流れ
2016年6月5日になって、北海道警函館中央署は、3日、大和君が発見されたことを受け、心理的虐待の疑いがあるとして、同日、北海道函館児童相談所(函館市)へ書面で通告したことを明らかにしました。
大和君が無事保護されたことにより、おそらく、警察は、形式的に両親の刑事責任の有無を判断するのではなく、専門家である児相の判断をまって、保護責任者遺棄罪の処理(起訴不起訴の方針の決定)をする方針だと思われます。
今回の北海道警函館中央署の対応は、世論に流されず、警察の職分をわきまえたもので、極めて冷静なものとして評価できます。
その理由を説明します。
児童虐待は、親も子どもも、その認識を有していないことが多いというのが現実です。
子どもにとっては親はかけがえのない存在ですから、親を許すのは当然の行為だとも言えます。
しかしたとえ親が反省し子供が許したとしても、その真意と真相を確かめる必要があります。
その意味で、子どもが見つかったのだから、親を許せという論調は間違いです。
今回事件での識者の論調は、子どもの行方不明時においても発見時においても、情緒的なものが多すぎることも特徴です。
許すにしても、きちんと真相が明らかになった後のことです。真相解明の手続はきちんと踏むべきです。
児童虐待実務の現実は、これまで、親に善意に考えた結果が、最悪の結果を生んできたことを反省し、とにかく万が一の悲劇を二度とおこならないようにする、ということです。
その調査の方法としては、警察よりも、児童虐待の専門家である児童相談所がふさわしいと言えます。
そこで警察は、その判断を、児童相談所に委ねたということでしょうから、その判断は正しいと言えます。
児童相談所は、通告されると、「48時間ルール=厚生労働省の指針」があり、既に、児相は何らかの調査に入っていると思われます(おそらく児童相談所が5日に調査に入ったことで、事実が確定したということで、警察が昨日公表したのだと思います。)。
今回の事件の全体像は、その後の第三者(専門家)の判断を待ちたい、と思います。
それが今回の事件、結果的に子どもは無事保護されましたが、死亡事件となる可能性が十分にあった事件の、本来の在り方です。
[参考]
・48時間ルール=厚生労働省の指針=厚生労働省のホームページより
・通告後の診断・判定・援助の流れ=厚生労働省のホームページより
[参考記事]
・大和君置き去りで児相へ通告 心理的虐待の疑いで道警=朝日新聞デジタル 6月5日(日)17時52分配信
北海道北斗市の小学2年、田野岡大和(やまと)君(7)が「しつけのため」として北海道七飯(ななえ)町の山中に置き去りにされ、6日ぶりに保護されたことをめぐり、道警函館中央署は5日、心理的虐待の疑いがあるとして、3日に北海道函館児童相談所(函館市)へ書面で通告したことを明らかにした。
・大和君「許すよ。お父さん優しいから許す」 父親が語る =朝日新聞デジタル 6月5日(日)19時2分配信
大和君は発見された3日午前から北海道函館市の市立函館病院に入院。貴之さんによると、3日夕からおかゆなどの病院食を残さず食べ、母親の手作りのハンバーグやパンが食べたいと話している。病室では塗り絵やトランプをして過ごし、点滴が5日朝に外された。
行方不明になってから保護されるまで、大和君は誰にも会わず、何も食べていないという。「どういう風に(演習場に)行ったかはあまり覚えていない。小屋にいて、水を飲んだりマットで寝たりした」と話し、演習場で一人で過ごしたことについて「さみしかったけど、大丈夫だった」と言っているという。
3日に再会した貴之さんが病室で謝ると、大和君は「許すよ。お父さんが優しいから許す」と話したという。貴之さんは「申し訳ない気持ちになった」と声をつまらせた。
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