ゴーン逮捕と捜査の行方と問われる罪
今日2018年11月19日、
東京地検特捜部は、日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の役員報酬を有価証券報告書に少なく記載したとして、ゴーン容疑者と同社代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者(62)を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕し、日産本社を同法違反容疑で捜索しました。
特捜部の発表によると、ゴーンとケリー両容疑者は、2011年3月期~15年3月期のゴーン容疑者の役員報酬が計約99億9800万円だったにもかかわらず、計約49億8700万円と有価証券報告書に虚偽の記載をした疑いがもたれているといいます。
→過小申告、ゴーン会長逮捕-日産のケリー取締役も=産経デジタル 2018/11/19 20:00
日産自動車という上場会社の中で、約50億円もの役員報酬の過少記載が行われてきた事実に驚きますが、この犯行に加担したのが会長と社長という組み合わせにも驚きます。
いったい、日産も、会社として、何をしてきたのでしょう。二人の犯行に「組織的」に加担していたとみられてもおかしくありません。会社内の問題について、第三者委員会を設置して、コーポレートガバナンスコードにのっとり、抜本的に会社の健全化を果たすべき状況です。
ゴーン容疑者の、1999年6月に45歳の若さで、経営難に陥った日産を立て直した功績は素晴らしいものでしたが、この20年で、ゴーン容疑者は、まさに魔境に落ちたというべきでしょう。あまりにも異常で悪質な犯行です。
多少税金を多めに払っても、十分に余りある報酬を得ながら、50億円もの過少申告をした動機も問われることになりましょう。どうして50億円もの過少申告をしたのか。余罪も気になりますし、共犯者も気になります。
この報道が事実だとすると、ゴーン容疑者には、今後、次の3つの犯罪の適用が検討されることになるでしょう。
=第百九十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
に加え
2 所得税法違反
第二百三十八条 偽りその他不正の行為により、・・・所得税を免れ・・・所得税の還付を受けた者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
そして
=(取締役等の特別背任罪) 第九百六十条 次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 →三 取締役、会計参与、監査役又は執行役
いずれも重罪で、10年以下の懲役にも問われる罪です。
本件について、脱税も会社への特別背任罪もないとは考えにくいので、特捜部は上記1から捜査に入りましたが、も、2と3の罪も、当然に適用が検討されなければなりません。
そして余罪が組み合わさると、併合罪として懲役15年までの罪となり、結局、50億円という巨額な特別背任罪は例を見ない悪質な犯行ですので、何か国際的な圧力がない限りは、懲役15年近く、10年を超える実刑の罪になることが確実な情勢です。
※刑法=下線は紀藤 (有期の懲役及び禁錮の加重) 第四十七条 併合罪のうちの二個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその二分の一を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。 (罰金の併科等) 第四十八条 罰金と他の刑とは、併科する。ただし、第四十六条第一項の場合は、この限りでない。 2 併合罪のうちの二個以上の罪について罰金に処するときは、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断する。
現在ゴーン容疑者は、64歳といいます。
仮釈放制度を考慮しても、70歳を超えるまでは優に娑婆に出てこれない可能性があります。
本当に考えられないほど、愚かな罪というほかありません。
いったい、ゴーン容疑者は、何をしたかったのでしょうか。
あと何回再逮捕されるのかなど、捜査の行方が注目です。
{参考}
・日産自動車の発表:当社代表取締役会長らによる重大な不正行為について =2018年11月19日
日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区、社長:西川 廣人)は、内部通報を受けて、数カ月間にわたり、当社代表取締役会長カルロス・ゴーン及び代表取締役グレッグ・ケリーを巡る不正行為について内部調査を行ってまいりました。
その結果、両名は、開示されるカルロス・ゴーンの報酬額を少なくするため、長年にわたり、実際の報酬額よりも減額した金額を有価証券報告書に記載していたことが判明いたしました。
そのほか、カルロス・ゴーンについては、当社の資金を私的に支出するなどの複数の重大な不正行為が認められ、グレッグ・ケリーがそれらに深く関与していることも判明しております。
当社は、これまで検察当局に情報を提供するとともに、当局の捜査に全面的に協力してまいりましたし、引き続き今後も協力してまいる所存です。
内部調査によって判明した重大な不正行為は、明らかに両名の取締役としての善管注意義務に違反するものでありますので、最高経営責任者において、カルロス・ゴーンの会長及び代表取締役の職を速やかに解くことを取締役会に提案いたします。また、グレッグ・ケリーについても、同様に、代表取締役の職を解くことを提案いたします。
このような事態に至り、株主の皆様をはじめとする関係者に多大なご迷惑とご心配をおかけしますことを、深くお詫び申し上げます。早急にガバナンス、企業統治上の問題点の洗い出し、対策を進めてまいる所存であります。
以上
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