行政処分を受けた初めての法律事務所として消費者被害の歴史に残ってしまったアディーレ法律事務所の失態と波紋
2016年2月16日、消費者庁のサイトのTOPページに、「弁護士法人アディーレ法律事務所に対する景品表示法に基づく措置命令について」が、掲載されました。
消費者庁は、本日、弁護士法人アディーレ法律事務所に対し、景品表示法第6条の規定に基づき、措置命令(別添参照)を行いました。弁護士法人アディーレ法律事務所が供給する債務整理・過払い金返還請求に係る役務の表示について、景品表示法に違反する行為(同法第4条第1項第2号(有利誤認)に該当)が認められました。
法律事務所が、弁護士自治の要の弁護士会の「懲戒」ではなく、他の行政庁から外圧的に行政処分を受けたのは、戦前の治安維持法下であればともかく、おそらく、戦後初のことです。
消費者被害の歴史に、アディーレ法律事務所の名前は燦然と残ることになると思います。今回の景表法による処分は、消費者法の教科書にのるべき重要な行政処分の一つとなることは間違いありません。
今回、行政処分を下したのは、消費者を守る立場の「消費者庁」です。
2000年10月1日からの弁護士広告解禁の流れの中、弁護士の事業戦略か、営業を重視して消費者であるクライアントの立場を守らない、あるいは軽視する法律事務所が歴井的に登場してきたということも、大きく、弁護士を監督する立場の弁護会は、憂慮すべきだろうと思います。
以前、こうした弁護士の広告問題について、景表法に問えないかを、消費者庁に問い合わせた時に、消費者庁は、弁護士の広告の問題は、一次的には、弁護士法、すなわち弁護士会の所管の問題だと、言われたことがあります。
今回の措置は、弁護士会が自浄作用として、弁護士広告の問題に真剣に取り組まないことに、業を煮やした消費者庁の担当者の憤りの表れともとれます。
実際、4年10カ月の間、期間限定キャンペーンを続けていたというのは、あまりにも露骨な景表法違反であり、とても悪質だろうと思います。
弁護士自治の根幹が問われているわけですから、弁護士会(中心は東京弁護士会)も自身の不祥事ととらえ、早急に、懲戒の審査を開始すべきです(会が直接立件することを、「会立件」(かいりっけん)と言います。)。
弁護士法人としてのアディーレ法律事務所の本店も、代表弁護士の石丸幸人弁護士↓も、いずれも東京弁護士会所属です。
⇒弁護士法人としてのアディーレ法律事務所の本店
⇒石丸幸人弁護士
そして、そもそも会社の不祥事の際は、社長の責任問題が当然に問題となります。
本来は、事務所の代表である以上、石丸弁護士が、直接、消費者の前で、謝罪すべき事態だろうと思われますが、石丸弁護士は、いまだに公式の会見をされていないようです。ホームページにすら、今回の行政処分に触れられていません。
NHKの報道では、誰のコメントかわからない形で、アディーレ法律事務所のコメントとして、
「注意不足だった。今後は、誤解を招く表示をしないよう、再発防止策を徹底していきたい」
と言っていますが、
現在のアディーレ法律事務所のホームページを見ても、いまだに、まるで「信頼色」が一色です。
今回の事態に反省がまったく感じられないホームページの作りであり、まるで行政処分を受けたことをなかったことにしたい、かのようです。
しかし、このまま臭いものにふたのごとく、放置され続けるのであれば、アディーレ法律事務所のサイトに書いてあることの、信頼性にすら疑問を感じざるを得ません。
真に、アディーレ法律事務所(社員弁護士のみならず、所属弁護士全員の責任でもあります。)と、その代表の石丸弁護士が反省されるのであれば、こうしたサイト構成も見直されるべきだろうと思います。
そもそもアディーレ法律事務所は、景品表示法に強いと言うことも標榜していた、はずでした。↓
しかし、このページ、昨日までは見れたのに、今日になって消しているみたいです。
その対応にも大きな問題を感じます。
ホームページを変更するなら、まずは、TOPページに、謝罪文を、せめて顛末書を掲載すべきではないでしょうか。
なぜなら、
1)景表法に強いのが本当なら、景表法違反になることを知りながら広告をしていたということになりますから、まさに利益重視の確信犯です。そのこと自体が問題とされなければなりません。本件と同種事案の「閉店セール」が嘘なら、景表法違反になることは、法律家なら、誰でも知っていることです。⇒消費者庁のサイトのQ&A
2)仮にアディーレ法律事務所は、「本当は景表法に強い弁護士はおらず、景表法には強くない」というのであれば、明らかに、これも利益重視の「誇大広告」です。こうした誇大広告自体も、景表法違反に問われる可能性があります。
いずれであっても、消費者に対する説明責任があると思います。
これでは、「サービス業」であることの「徹底」を掲げる法律事務所を標榜すること自体に、「表示に偽りあり」と言うべきです。
きちんと、この問題を総括し、消費者に対する説明責任を果たしたうえで、新たなスタートを切られるのが、肝要だろうと思います。
[参考]
■紀藤のブログから
・2015.10.24 法律事務所で誇大広告!史上初めてのことではなかろうか>弁護士法人アディーレ法律事務所「債務整理に係る事務【誇大表示・広告に関するお知らせ・返金】」(回収・無償修理等の情報)_国民生活センター
・2009.02.14 破産申し立て「重大な過失」…石丸幸人弁護士のアディーレ法律事務所に賠償命令
■参考記事=以下下線は、紀藤
・1か月限定キャンペーンを約5年 法律事務所を処分= NHK 2月16日 20時31分
過払い金の返還請求などを手がける東京の法律事務所が、着手金が無料になるキャンペーンを1か月間の「期間限定」と表示しながら、実際には5年近く続けていたのは景品表示法に違反するとして、消費者庁は再発防止を命じる行政処分を行いました。
処分を受けたのは東京・豊島区の「アディーレ法律事務所」です。
消費者庁によりますと、この法律事務所では消費者金融に対する過払い金の返還請求の業務に関して、インターネットのホームページで着手金を無料にするなどのキャンペーンを1か月間の「期間限定」と表示していましたが、実際には去年8月まで4年10か月の間、同様の表示を続けていたということです。
消費者庁は、期間内に申し込まないと着手金がかかるかのように表示したのは、不当な表示を禁じた景品表示法に違反するとして、アディーレ法律事務所に対し16日、再発防止を命じる行政処分を行いました。
アディーレ法律事務所によりますと、現在は期間限定の表示を止め通常のサービスとして着手金を無料にするなどしているということです。
NHKの取材に対し、アディーレ法律事務所は「1か月ごとにキャンペーンの継続を判断していたが、注意不足だった。今後は、誤解を招く表示をしないよう、再発防止策を徹底していきたい」と話しています。
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