「油事件」の参照条約>日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約の「47項目の対象犯罪」 2015/6/3午前1時35分更新情報あり
日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約=なお正文は⇒PDF
の付表に47項目の犯罪があげられています。
特に、本件では、19 財物、文書又は施設の損壊に関する罪が該当している。
【法令番号 】昭和五十五年三月五日条約第三号
【施行年月日】昭和五十五年三月二十六日外務省告示第八十六号
日本国及びアメリカ合衆国は、
犯罪の抑圧のための両国の協力を一層実効あるものとすることを希望して、次のとおり協定した。
第一条
各締約国は、第二条1に規定する犯罪について訴追し、審判し、又は刑罰を執行するために他方の締約国からその引渡しを求められた者であつてその領域において発見されたものを、この条約の規定に従い当該他方の締約国に引き渡すことを約束する。当該犯罪が請求国の領域の外において行われたものである場合には、特に、第六条1に定める条件が適用される。
第二条
1 引渡しは、この条約の規定に従い、この条約の不可分の一部をなす付表に掲げる犯罪であつて両締約国の法令により死刑又は無期若しくは長期一年を超える拘禁刑に処することとされているものについて並びに付表に掲げる犯罪以外の犯罪であつて日本国の法令及び合衆国の連邦法令により死刑又は無期若しくは長期一年を超える拘禁刑に処することとされているものについて行われる。
前記犯罪の一が実質的な要素をなしている犯罪については、合衆国政府に連邦管轄権を認めるために州際間の輸送又は郵便その他州際間の設備の使用が特定の犯罪の要件とされている場合であつても、引渡しを行う。
2 引渡しを求められている者が1の規定の適用を受ける犯罪について請求国の裁判所により刑の言渡しを受けている場合には、その者が死刑の言渡しを受けているとき又は服すべき残りの刑が少なくとも四箇月あるときに限り、引渡しを行う。
第三条
引渡しは、引渡しを求められている者が被請求国の法令上引渡しの請求に係る犯罪を行つたと疑うに足りる相当な理由があること又はその者が請求国の裁判所により有罪の判決を受けた者であることを証明する十分な証拠がある場合に限り、行われる。
第四条
1 この条約の規定に基づく引渡しは、次のいずれかに該当する場合には、行われない。
(1)引渡しの請求に係る犯罪が政治犯罪である場合又は引渡しの請求が引渡しを求められている者を政治犯罪について訴追し、審判し、若しくはその者に対し刑罰を執行する目的で行われたものと認められる場合。この規定の適用につき疑義が生じたときは、被請求国の決定による。
(2)引渡しを求められている者が被請求国において引渡しの請求に係る犯罪について訴追されている場合又は確定判決を受けた場合
(3)日本国からの引渡しの請求にあつては、合衆国の法令によるならば時効の完成によつて引渡しの請求に係る犯罪について訴追することができないとき。
(4)合衆国からの引渡しの請求にあつては、次のいずれかに該当する場合であつて、日本国の法令によるならば時効の完成その他の事由によつて引渡しの請求に係る犯罪について刑罰を科し又はこれを執行することができないとき。
(a)日本国が当該犯罪に対する管轄権を有するとした場合
(b)日本国がその管轄権を現に有しており、かつ、その審判が日本国の裁判所において行われたとした場合
2 被請求国は、引渡しを求められている者が引渡しの請求に係る犯罪について第三国において無罪の判決を受け又は刑罰の執行を終えている場合には、引渡しを拒むことができる。
3 被請求国は、引渡しを求められている者が被請求国の領域において引渡しの請求に係る犯罪以外の犯罪について訴追されているか又は刑罰の執行を終えていない場合には、審判が確定するまで又は科されるべき刑罰若しくは科された刑罰の執行が終わるまで、その引渡しを遅らせることができる。
第五条
被請求国は、自国民を引き渡す義務を負わない。ただし、被請求国は、その裁量により自国民を引き渡すことができる。
第六条
1 引渡しの請求に係る犯罪が請求国の領域の外において行われたものである場合には、被請求国は、自国の法令が自国の領域の外において行われたそのような犯罪を罰することとしているとき又は当該犯罪が請求国の国民によつて行われたものであるときに限り、引渡しを行う。
2 この条約の適用上、締約国の領域とは、当該締約国の主権又は権力の下にあるすべての陸地、水域及び空間をいい、当該締約国において登録された船舶及び当該締約国において登録された航空機であつて飛行中のものを含む。この規定の適用上、航空機は、そのすべての乗降口が乗機の後に閉ざされた時からそれらの乗降口のうちいずれか一が降機のために開かれる時まで、飛行中のものとみなす。
第七条
1 請求国は、次のいずれかに該当する場合を除くほか、この条約の規定に従つて引き渡された者を、引渡しの理由となつた犯罪以外の犯罪について拘禁し、訴追し、審判し、若しくはその者に対し刑罰を執行しないものとし、又はその者を第三国に引き渡さない。ただし、この規定は、引渡しの後に行われた犯罪については、適用しない。
(1)引き渡された者が引渡しの後に請求国の領域から離れて当該請求国の領域に自発的に戻つてきたとき。
(2)引き渡された者が請求国の領域から自由に離れることができるようになつた日から四十五日以内に請求国の領域から離れなかつたとき。
(3)被請求国が、引き渡された者をその引渡しの理由となつた犯罪以外の犯罪について拘禁し、訴追し、審判し、若しくはその者に対し刑罰を執行すること又はその者を第三国に引き渡すことに同意したとき。
2 請求国は、引渡しの理由となつた犯罪を構成する基本的事実に基づいて行われる限り、第二条1の規定に従い引渡しの理由となるべきいかなる犯罪についても、この条約の規定に従つて引き渡された者を拘禁し、訴追し、審判し、又はその者に対し刑罰を執行することができる。
第八条
1 引渡しの請求は、外交上の経路により行う。
2 引渡しの請求には、次に掲げるものを添える。
(a)引渡しを求められている者を特定する事項を記載した文書
(b)犯罪事実を記載した書面
(c)引渡しの請求に係る犯罪の構成要件及び罪名を定める法令の条文
(d)当該犯罪の刑罰を定める法令の条文
(e)当該犯罪の訴追又は刑罰の執行に関する時効を定める法令の条文
3 引渡しの請求が有罪の判決を受けていない者について行われる場合には、次に掲げるものを添える。
(a)請求国の裁判官その他の司法官憲が発した逮捕すべき旨の令状の写し
(b)引渡しを求められている者が逮捕すべき旨の令状にいう者であることを証明する証拠資料
(c)引渡しを求められている者が被請求国の法令上引渡しの請求に係る犯罪を行つたと疑うに足りる相当な理由があることを示す証拠資料
4 引渡しの請求が有罪の判決を受けた者について行われる場合には、次に掲げるものを添える。
(a)請求国の裁判所が言い渡した判決の写し
(b)引渡しを求められている者が当該判決にいう者であることを証明する証拠資料
(c)(i)有罪の判決を受けた者が刑の言渡しを受けていないときは、逮捕すべき旨の令状の写し
(ii)有罪の判決を受けた者が刑の言渡しを受けているときは、刑の言渡し書の写し及び当該刑の執行されていない部分を示す書面
5 引渡しの請求には、被請求国の法令により必要とされるその他の資料を添える。
6 この条約の規定に従い請求国が提出するすべての文書は、被請求国の法令の要求するところに従い正当に認証されるものとし、これらの文書には被請求国の国語による正当に認証された翻訳文を添付する。
7 被請求国の行政当局は、引渡しを求められている者の引渡請求の裏付けとして提出された資料がこの条約の要求するところを満たすのに十分でないと認める場合には、自国の裁判所に当該引渡請求を付託するかどうかを決定する前に請求国が追加の資料を提出することができるようにするため、請求国に対しその旨を通知する。被請求国の行政当局は、その資料の提出につき期限を定めることができる。
第九条
1 緊急の場合において、請求国が外交上の経路により、被請求国に対し、引渡しを求める者につき第二条1の規定に従い引渡しの理由となる犯罪について逮捕すべき旨の令状が発せられ又は刑の言渡しがされていることの通知を行い、かつ、引渡しの請求を行うべき旨を保証して仮拘禁の要請を行つたときは、被請求国は、その者を仮に拘禁することができる。仮拘禁の要請においては、引渡しを求める者を特定する事項及び犯罪事実を明らかにするものとし、被請求国の法令により必要とされるその他の情報を含める。
2 仮拘禁が行われた日から四十五日以内に請求国が引渡しの請求を行わない場合には、仮に拘禁された者は、釈放される。ただし、この規定は、被請求国がその後において引渡しの請求を受けた場合に、引渡しを求められる者を引き渡すための手続を開始することを妨げるものではない。
第十条
被請求国は、引渡しを求められている者が、被請求国の裁判所その他の権限のある当局に対し、その引渡しのために必要とされる国内手続における権利を放棄する旨を申し出た場合には、被請求国の法令の許す範囲内において、引渡しを促進するために必要なすべての措置をとる。
第十一条
被請求国は、同一の又は異なる犯罪につき同一の者について他方の締約国及び第三国から引渡しの請求を受けた場合には、いずれの請求国にその者を引き渡すかを決定する。
第十二条
1 被請求国は、請求国に対し、外交上の経路により引渡しの請求についての決定を速やかに通知する。
2 被請求国は、その権限のある当局が引渡状を発したにもかかわらず、その法令により定められた期限内に請求国が引渡しを求めている者の引渡しを受けない場合には、その者を釈放し、その後において同一の犯罪についてその者の引渡しを拒むことができる。請求国は、引渡しを受けた者を被請求国の領域から速やかに出国させる。
第十三条
引渡しが行われる場合において、犯罪行為の結果得られたすべての物又は証拠として必要とされるすべての物は、被請求国の法令の許す範囲内において、かつ、第三者の権利を害さないことを条件として、これを引き渡す。
第十四条
1 被請求国は、引渡しの請求に起因する国内手続(引渡しを求められている者の拘禁を含む。)について必要なすべての措置をとるものとし、そのための費用を負担する。ただし、引渡しを命ぜられた者の護送に要した費用は、請求国が支払う。
2 被請求国は、請求国に対し、引渡しを求められた者がこの条約の規定に従い拘禁され、審問され、又は引き渡されたことによりその者が受けた損害につきその者に支払つた賠償金を理由とする金銭上の請求を行わない。
第十五条
1 各締約国は、外交上の経路により請求が行われた場合には、次のいずれかに該当する場合を除くほか、第三国から他方の締約国に対し引き渡された者をその領域を経由の上護送する権利を他方の締約国に認める。
(1)引渡しの原因となつた犯罪行為が通過を求められている締約国の法令によるならば犯罪を構成しないとき。
(2)引渡しの原因となつた犯罪行為が政治犯罪であるとき又は引渡しの請求が引き渡された者を政治犯罪について訴追し、審判し、若しくはその者に対し刑罰を執行する目的で行われたものと認められるとき。この規定の適用につき疑義が生じたときは、通過を求められている締約国の決定による。
(3)通過により公共の秩序が乱されると認められるとき。
2 1の場合において、引渡しを受けた締約国は、その領域を経由の上護送が行われた締約国に対し、護送に関連してその要した費用を償還する。
第十六条
1 この条約は、批准されなければならず、批准書は、できる限り速やかにワシントンで交換されるものとする。この条約は、批准書の交換の日の後三十日目の日に効力を生ずる。
2 この条約は、第二条1に規定する犯罪であつてこの条約の効力発生前に行われたものについても適用する。
3 日本国とアメリカ合衆国との間で千八百八十六年四月二十九日に東京で署名された犯罪人引渡条約及び千九百六年五月十七日に東京で署名された追加犯罪人引渡条約は、この条約の効力発生の時に終了する。ただし、この条約の効力発生の際に被請求国において係属している引渡しに係る事件は、前記の犯罪人引渡条約及び追加犯罪人引渡条約に定める手続に従う。
4 いずれの一方の締約国も、他方の締約国に対し六箇月前に文書による予告を与えることによつていつでもこの条約を終了させることができる。
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。
千九百七十八年三月三日に東京で、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。
日本国のために
園田 直
アメリカ合衆国のために
マイケル・J・マンスフィールド
付表1 殺人、傷害致死又は重過失致死(自殺の教唆又はほう助を含む。)
2 人を殺す意図をもつて行われた暴行
3 悪質な傷害、重過失致傷又は暴行
4 堕胎
5 遺棄致死傷
6 略取、誘かい又は不法な逮捕若しくは監禁に関する罪
7 脅迫
8 強かん、強制わいせつ
9 いん行勧誘又は売春に関する罪
10 わいせつ物に関する罪
11 重婚
12 住居侵入
13 強盗
14 窃盗
15 恐かつ
16 詐欺(欺もう的手段により財物、金銭、有価証券その他の経済的価値を有するものを取得すること)
17 横領、背任
18 ぞう物に関する罪
19 財物、文書又は施設の損壊に関する罪
20 工業所有権又は著作権の保護に関する法令に違反する罪
21 暴行又は脅迫による業務妨害
22 放火、重過失による失火
23 騒じようの主導、指揮又はせん動
24 公衆の健康の保護に関する法令に違反する罪
25 激発力、水力その他の破壊的手段により公共の危険を生じさせる罪
26 国際法上の海賊
27 列車、航空機、船舶その他の交通手段の不法な奪取又は管理に関する罪
28 列車、航空機、船舶その他の交通手段の正常な運行を妨げ又はこれに危険を生じさせる罪
29 爆発物、火炎装置又は危険な若しくは禁止された武器の規制に関する法令に違反する罪
30 麻薬、大麻、向精神薬若しくはコカイン又はそれらの原料若しくは派生物その他の危険な薬品若しくは化学製品の規制に関する法令に違反する罪
31 毒物その他の健康に有害な物質の規制に関する法令に違反する罪
32 偽造に関する罪
33 とばく又は富くじの規制に関する法令に違反する罪
34 公務執行妨害、職務強要
35 虚偽報告に関する罪
36 偽証に関する罪
37 この条約の第二条1に規定する犯罪を行つたことによつて拘禁され又は刑に服している者の逃走に関する罪
38 犯人蔵匿、証拠隠滅その他の司法作用の妨害に関する罪
39 贈賄、収賄
40 職権濫用に関する罪
41 公職の選挙又は政治資金の規制に関する法令に違反する罪
42 脱税に関する罪
43 会社その他の法人の規制に関する法令に違反する罪
44 破産又は会社更生に関する法令に違反する罪
45 私的独占又は不公正な商取引の禁止に関する法令に違反する罪
46 輸出入又は資金の国際移動の規制に関する法令に違反する罪
47 前記の各罪の未遂、共謀、ほう助、教唆又は予備
(日本国とアメリカ合衆国との間の犯罪人引渡しに関する条約に関する交換公文)
(合衆国側書簡)
(訳文)
書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の犯罪人引渡しに関する条約に言及するとともに、両政府の代表者の間で到達した次の了解をアメリカ合衆国政府に代わつて確認する光栄を有します。
1 この条約の第十四条の「措置」には、アメリカ合衆国については適当なアメリカ合衆国の法務職員による日本国政府を代表するための措置、日本国については適当な日本国の法務職員によるアメリカ合衆国からの引渡しの請求に係る必要な措置を含む。
2 この条約のいかなる規定も、両締約国が千九百六十年一月十九日にワシントンで署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定に基づいて有する権利及び義務に影響を及ぼすものではない。
本使は、閣下が前記の了解を日本国政府に代わつて確認されれば幸いであります。
本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十八年三月三日に東京で
アメリカ合衆国特命全権大使
マイケル・J・マンスフィールド
日本国外務大臣 園田 直閣下
(日本側書簡)
書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
本使は、本日署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の犯罪人引渡しに関する条約に言及するとともに、両政府の代表者の間で到達した次の了解をアメリカ合衆国政府に代わつて確認する光栄を有します。
1 この条約の第十四条の「措置」には、アメリカ合衆国については適当なアメリカ合衆国の法務職員による日本国政府を代表するための措置、日本国については適当な日本国の法務職員によるアメリカ合衆国からの引渡しの請求に係る必要な措置を含む。
2 この条約のいかなる規定も、両締約国が千九百六十年一月十九日にワシントンで署名されたアメリカ合衆国と日本国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定に基づいて有する権利及び義務に影響を及ぼすものではない。
本使は、閣下が前記の了解を日本国政府に代わつて確認されれば幸いであります。
本大臣は、更に、閣下の書簡に掲げられた了解を日本国政府に代わつて確認する光栄を有します。
本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十八年三月三日に東京で
日本国外務大臣 園田 直
アメリカ合衆国特命全権大使
マイケル・J・マンスフィールド閣下
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