すぐにでも司直の手に委ねるべき東芝の組織的不正決算
東芝が、過去の決算で利益を水増ししていた問題で、
調査にあたっている第三者委員会は、20日にも、報告書をまとめるとの報道がなされ、
この報道によると、「田中久雄社長ら経営陣について」「コンプライアンス(法令や社会規範の順守)意識が欠如していた」が「トップからの明確な不正の指示は確認できなかった」「経営陣が虚偽の資料作成を指示したことは確認できなかった」との「認定」もするという。
しかし「社長が知らなかった」というのは、甘すぎる認定ではないか?
確かに第三者委員会には強制調査権限がない。
しかし「確認できなかった」というなら、まさに、この問題は、強制捜査権限を持つ司直の手に委ねられるべきだろうと思う。
第三者委員会は、強制調査権限がないからと言って、「トップからの明確な不正の指示は確認できなかった」という甘い認定に逃げ込むのではなく、自ら、刑事告発をするか、東芝の新経営陣に対し、「告発」を勧告すべきである。
そうでないと「第三者委員会」そのものが、中立性を疑われるどころか、証拠隠ぺいすら疑われることになる。
[参考]
■第三者委員会の委員の中立性に関する専門家「久保利英明弁護士」の意見
「東芝の会計問題、危機管理が不十分だ」 第三者委を歴任してきた久保利弁護士に聞く | 企業戦略 - 東洋経済オンライン 富田 頌子:編集局記者 2015年06月16日
■東芝のホームページより
・4月3日 (IR)特別調査委員会の設置に関するお知らせ=PDF
・5月8日 (IR)第三者委員会設置のお知らせ=PDF
・5月15日 (IR)第三者委員会の委員の選任等に関するお知らせ=PDF
・東芝:会社概要(社長メッセージ)
今回の事態に対して深くお詫びいたします。
当社では、一部インフラ関連の工事進行基準に係る会計処理について、調査を必要とする事項が判明したことを受け、本年4月に特別調査委員会を設置し、調査を進めてまいりましたが、その過程で、さらに調査対象を広げる必要があると判断したことから、5月15日に外部有識者だけで構成する第三者委員会に調査を委嘱し、現在、調査を進めていただいております。
当社としては、第三者委員会の調査に全面的に協力してまいります。
今回の件に関しまして、株主様をはじめ皆様には多大なご迷惑、ご心配をおかけしておりますことを心からお詫び申し上げますとともに、信頼回復に向けて全力を尽くしてまいりますので、引き続きご支援賜りたくお願い申し上げます。
取締役 代表執行役社長 田中 久雄
■東芝の自画自賛の本
森浜田松本法律法律事務所編 「変わるコーポレートガバナンス ― コード監査等委員会 グループ内部統制」=単行本(ソフトカバー)– 日本経済新聞出版社 (2015/5/21)⇒http://fb.me/2UIoWpz9m
◆本の説明=2015年6月適用のコーポレート・ガバナンス・コード。株主総会と取締役会機能の整理を軸とする新たな流れにどう対応するか? 上場企業にとって喫緊の課題を企業法務の第一人者が経営の視点からわかりやすく解説。
◆この本に対する紀藤のTwitter上の発言=2015/6/3:18:18:03から=以下、一部内容変更の上、再掲
この5月に出た本。東芝の顧問弁護士らが所属する法律事務所の「森浜田松本法律法律事務所」が編んだ本だが、一部、東芝の取締約監査委員(島岡聖也氏)が、東芝のガバナンスについて触れている。今となっては白々しく感ずるほかない
ちなみにこの問題に関する、僕の持論は、
コーポレートガバナンスは、継続的利益共有関係にある「顧問法律事務所」にはできない、ということ。経営的に従属すればするほど、クライアントに従属的になり、強い意見は言えなくなる関係にある、からである。
顧問法律事務所には、監査法人と同じ問題があり、東芝事件でも、監査法人の問題が報じられています。
◆ [参考]=紀藤が所長のリンク総合法律事務所のホームページから
「時に、ビジネス系の顧問弁護士と企業とは利潤追求の点で利益が相反する関係に立ちます。
そもそも顧問弁護士は、企業に事件誘導する方が金銭的便益が大きくなるうえ、顧問先の意見に対しても迎合的になりがちです。そのため特に企業の危機的状況化においては、弁護士の指導に従った結果が、弁護士だけが利益をあげ、企業を危機的状況に追いやる事態も発生しているというのが現状です。
ですから企業の法令順守が叫ばれる今日、ますます、消費者被害の未然防止や企業のリスクマネイジメントの観点から、顧問弁護士とは別の視点で、採算度外視したアドバイスができる、市民や消費者の立場からの弁護士による「セカンドオピニオン」の重要性をもっと認識する必要が生じています。」
■参考記事=下線は紀藤
・東芝の組織的不正認定へ 第三者委、利益水増し問題で=朝日新聞2015年7月16日(木)5時40分配信
東芝が過去の決算で利益を水増ししていた問題で、調査にあたっている第三者委員会が問題を「組織的な不正」と認定することが15日、関係者の話でわかった。本社の経理担当者が虚偽の資料をつくり、監査法人に示して水増しを隠そうとしていたという。
20日にもまとめる報告書に盛り込む見通しだ。佐々木則夫副会長、田中久雄社長ら経営陣について「コンプライアンス(法令や社会規範の順守)意識が欠如していた」とも指摘するとみられる。トップからの明確な不正の指示は確認できなかったものの、高すぎる目標に沿った利益の実現を部下に強要したことが、不正に結びついたと認定するという。
組織的な隠蔽(いんぺい)があったとみて第三者委が特に問題視しているのは、半導体事業だ。同事業では、原価を実際より少なく見せかけていた。東芝の会計監査をしている新日本監査法人の担当者が状況に疑いを持ったのに対し、本社の経理担当者はうその資料を示して「原価が安く抑えられているので利益を上げられる」などと説明していたという。経営陣が虚偽の資料作成を指示したことは確認できなかったが、組織全体として不正を隠蔽しようとしたと、第三者委は認定した模様だ。
・<東芝>監査法人の責任追及 不適切会計で第三者委=毎日新聞 7月15日(水)10時30分配信
東芝の不適切な会計処理を巡る問題で、同社が5月に設置した第三者委員会が、監査法人の責任を追及していることが分かった。この問題では、東芝の2014年3月期までの営業利益のかさ上げ額が2000億円規模に膨らむ可能性が出ている。監査法人が複数年にわたりこれらの巨額な不適切会計を指摘してこなかった責任が問われており、第三者委は近くまとめる調査報告書に盛り込むことを検討している。
東芝の決算書類の監査を担当しているのは、大手監査法人の一つである新日本監査法人。第三者委の関係者は毎日新聞の取材に対し、「経営陣の説明をうのみにせず、業務の流れや数字からおかしな点を見抜かなければいけない」と指摘。第三者委の報告書で「何らかの責任に言及せざるを得ない」との見通しを示した。
東芝はこれまで、インフラ関連工事で売り上げを前倒しして計上するなど不適切会計があったと発表。第三者委の調査では、半導体やパソコンなどの主要事業を含め、全社的に不適切処理が行われていた疑いが強まっている。
新日本は12年7月、オリンパスの損失隠し問題で、金融庁からあずさ監査法人とともに業務改善命令を受けている。今回の問題については、「第三者委の報告書が出ておらず、コメントは控えたい」としている。
また、東芝の取締役会に設置された監査委員会(委員長・久保誠元副社長)も監査を適切に行っていなかった疑いがあり、第三者委は「チェック体制の機能不全」の実態解明を進めている。【片平知宏】
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