「年金情報流出事件」から明白となった、安倍政権下で主導する「マイナンバー制度」の背理
日本年金機構は、2015年6月1日、年金加入者の個人情報約125万件が漏えいしたことを発表した⇒日本年金機構の公表文=PDF
この問題にからみ、こんな興味深い記事が出ています。
年金情報の流出「怪しいメール」はこんなに巧妙だ(テスト付き)=The Huffington Pos 投稿日: 2015年06月03日 14時17分JST;更新: 2015年06月03日 14時17分 JST
上原哲太郎@tetsutalow 7:31 - 2015年6月3日
怪しいメール開く方がアホだろ見たいな話が出回っているようなので、7年ほど前に私が受け取ったメールを晒しておきますね(一部隠してます)。これを「怪しい」って判断できる人は大したもんだと思います。今はもっと巧妙だし。
しかし、どんな議論をしても、メール受け取れるコンピュータと年金情報を閲覧するコンピュータが、政府の日本年金機構内で相互に接続していた、という初歩的かつ幼稚とも言えるセキュリティ感覚の欠如問題が、今回の背景にある。
そもそもインターネットとの接続がなければ、ウイルスの感染もなく、年金情報も流出しなかった。
これはセキュリティの専門家でもない、職場で働く、一般の労働者が、怪しいファイルを見抜くことが難しいことからくる、セキュリティの知恵、当たり前の初歩的なセキュリティの常識である、つまり、労働者教育の問題ですらない。このその初歩的なセキュリティ感覚でさえ、政府部内で共通認識がなかったという結果から生じた不始末でもある。
それが今回の個人情報流出事故について、あまりにも私たちを唖然とさせる原因である。
ところで今年10月から通知が開始されるマイナンバーにつき、政府は安全を強調するが、マイナンバーは、(1)個人ID(マイナンバー)と(2)個人情報、の集合体である。
政府は後者のセキュリティを強調しているが、どんなに強化しても、マイナンバーを政府内だけでなく、民間にまで公開していく以上、マイナンバーに、セキュリティの保障はまったくない。
そして大量のマイナンバーが世間にいったん暴露されれば、個人情報自体が危険に常にさらされ続けることになること必定である。
たとえば卑近な例でいえば、ある著名な芸能人のマイナンバーを考えたらいい。あるいは著名な政治家でもいい。
マイナンバーさえわかれば、政府内のどこかのバグをつくだけで(スパイ=内部者犯行でもいい)、ある特定の個人の個人情報は丸裸である。
だからこそ、先進国ではたとえば税とか社会保障とかの、特定の個人情報のマイナンバーを作っても(バグをつかれても、一部の個人情報の流出だけの痛手ですむ。)、日本のように、国の保有するすべての個人情報についての包括的マイナンバー制をとる(とろうとする)先進国は一つもないのである※(個人情報がひも付きされればされるほど、リスクが無限級数的に拡大する。)。
※⇒この点は、公知の事実と言える。たとえば「自治体情報政策研究所」代表の黒田充(くろだ みつる)氏の論考 2015年4月22日 (水) 「先進国は全てマイナンバーのような制度を入れている」のウソ (1)
にもかからず、
政府は、来年1月から包括的マイナンバー制度を導入しようとしている。コンピュータシステムというものは、作った瞬間から陳腐化していく。しかも安くなっていく。身近にあるパソコンの進化のスピードをみたら容易にわかる話である。
にもかかわらず、システムの更新の維持に膨大なコストがかかっていく。セキュリティの強化は、労働者側から見れば面倒さを増やすことでもあり、労働コストも当然、上がる。
そして、それはすべて国民の税金からまかなわれることになる。
そして念のためであるが、無限級級数化したリスクは、国防上も問題である。
日本が万が一、占領された場合のことを想像してみたら、すぐにわかることである(第三国による、戦時戦略的ハッキングを想像することでもよい※)。
国民の安全、安心を確保し、そして我が国の国防上の安全を、もっとも重視しようとする、安倍政権で、マイナンバー制を実現して行こうとすることは、まったく背理というほかない現象である。
僕は端的に、安倍政権は、安倍首相も、担当の甘利経済再生担当大臣も含めて、半世紀も前に国民背番号制を志向し、それが現実に不要になっても自らの力では止められなくなっている「官僚」に完全に騙されていると思う(不必要になっても続けられた「ダム建設」のようなものである。)。
マイナンバー制は、通常の国と同じように、政府内での番号のひも付きの議論で足るものであり、それで十分目的は達せられるというのが、結論であり、これがもっとも費用がかからず、維持費も最低限ですみ、国民、そして国防上も、安全、安心な方法である。
[参考]
・僕のFacebook上の意見⇒2015/6/2 9:24 https://www.facebook.com/masaki.kito/posts/792475750821750?pnref=story
「信頼は地に落ちたと思う。楽すればリスクは伴うのは当然。ひも付きは政府部内できちんと行えばよいだけで、全制度を同じ番号にするのは、氏名を公開するのと何ら変わらず、アクセスしたい方から見ると、天国となる。」
・マイナンバー制度の信頼性にも波紋 年金情報流出125万件(SankeiBiz)=6月2日(火)7時2分配信
-マイナンバー活用によるメリットは、行政事務の効率化、社会保障給付の適正化、税金逃れのチェックなど多岐にわたるが、それは裏返せば、個人情報保護の点では懸念材料。多くの個人情報にひも付けされた番号は、情報が流出して悪用されれば広範な被害に結びつく可能性がある。
・※⇒ソニーへのハッキング「北朝鮮政府に責任」 米FBI:朝日新聞デジタル ニューヨーク=中井大助 2014年12月20日05時28分
米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)が大規模なハッキングを受けていた問題で、米連邦捜査局(FBI)は19日、「北朝鮮政府に責任があると判断するのに十分な情報を集めた」と発表した。サイバー攻撃と位置づけ、「深刻に憂慮をしている」と述べた。
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