民法改正議論を注視すべき!備忘録:法務省の法制審議会「民法(債権関係)部会」
民民の問題を、規律する法律として、国民生活の基本に関わる「民法」(債権法分野)の改正議論が、平成21年11月24日から、法務省の法制審議会で始まっています。
民法(債権法)の全面改正は、1896(明治29)年の制定以来、初めてのことで、改正自体が必要な時期に来ているとは思うが、気になる点があります。
委員の中心は民法学者で、憲法学者は1人も入っていません。ですからその議論を見ても、日本国憲法下で初めて作られる民法なのに、「憲法理念」すら、議論に登場しません。
しかもそんな憲法的理解のない学者が、日本国憲法理念から創出された「消費者人権」を認める形で発展してきた消費者法(労働基本法と同じく、消費者基本法という基本法すら持っている法分野。)を、同じ民民の法律だからということで、民法に取り込む形での議論が進められています。
かなり心配です。
労働法も民法の特別法である要素を持ちますが、理念なく、労働法を民法に取り込むことは、単純な平等思想を労働法に持ち込む可能性を秘めて危険であるのと同様に、消費者法分野でも同様です。
政府は、「早ければ12年の通常国会への改正案提出を目指す」としており、かなりの注視が必要です。
民法改正を検討している部会=民法(債権関係)部会現在審議中の部会
[参考]
・債権法、初の全面改正へ 明治制定、時代に合わず 2009年8月23日3時5分 朝日新聞
世の中の様々な「契約」にかかわるルールを時代に合わせて見直すため、法務省は9月、民法の債権に関する規定(債権法)の改正を法制審議会に諮問する方針を固めた。債権法の全面改正は1896(明治29)年の制定以来、初めて。1世紀以上前の経済活動を前提にしたルールを総点検し、消費者保護の必要性を意識しながら、現代の消費者や企業の活動に見合ったものへと更新する。
民法は、契約の典型的な形式や、契約に基づく損害賠償請求はどのくらい時間がたつまで認められるかといった基本的なルールを定めており、街中で買い物をする消費者から国際的な商取引を手がける企業まで、社会全体に幅広くかかわりがある。ただ、規定した当時には想定されていなかったような契約形式も一般的になり始め、対応しきれないトラブルについては、長年、訴訟での裁判所の判断を積み重ねたものをルールがわりにしてきた。
このため、法の条文を読むだけではルールがわからないうえ、消費者保護などのためには規定そのものも不十分だとの指摘があった。企業や法律実務家を中心に、現代の経済実態を踏まえてルールを理解しやすくし、トラブル解決を素早く進められるように法改正すべきだとする声が相次いでいた。
今年4月には、民法学者や法務省の担当職員らが参加した民間の「民法(債権法)改正検討委員会」(委員長=鎌田薫・早稲田大教授)が改正試案を発表し、見直しの機運が高まった。その時期を探っていた法務省が法制審に諮問することで、改正への手続きが始まることになった。
法制審は、民法学者や弁護士、消費者団体の代表ら30人余で構成する専門部会を設置して審議を進める方針。検討委員会の主要メンバーも加わる予定だ。約400の条文が見直しの対象となるため、検討は2年以上かかる見通し。法務省は答申を得て、早ければ12年の通常国会への改正案提出を目指す。(延与光貞)
〈いわゆる「債権法」〉 全部で1044条ある民法は、第1編の総則から始まり、物権、債権、親族、相続の計5編からなる。債権法という名の法律があるわけではなく、第3編のことを債権法と呼ぶ。今回の改正は第3編全体と第1編の関係する部分が対象となる。
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