1997年当時に17社あって破綻せず残っていた最後の2社のうちの一つ「ふるさと共済牧場」(平成12年8月1に商号変更して、現「ふるさと牧場」)が、破綻状態に陥っています。
被害者が多数出ているようです。10年も放置した警察の責任は重大だと思います。
なお最近の真珠養殖詐欺商法や、えび養殖詐欺商法-ワールドオーシャンファーム事件(僕も、ワールドオーシャンファーム被害対策弁護団に参加しています。)などの走りの、和牛預託商法については、過去の経過を知らない方がおられますので、僕のホームページ等に書いた以前の経過を、まとめて直してみました。
1 和牛預託商法とは?
・子牛を買って成牛にして売れば利益が出ると称して、多数の消費者から金銭を預って、運用するという商法
・和牛預託商法の内容は、東京三弁護士会が、1997年6月に設置した110番の結果についての僕の原稿参照。
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■和牛預託商法への強制捜査と弁護士会の課題
元本保証や高配当をうたってオーナーを募集する和牛預託商法に対し、埼玉県警と群馬県警は、5月8日、出資法2条(預かり金の禁止)違反容疑で強制捜査に入りました。
今回強制捜査を受けたのは、長野県に本社がある有限会社「千紫(せんし)牧場」と、群馬県に本社がある有限会社「はるな共済牧場」の2社ですが、同種の業者は、農水省の調査で少なくとも17社あります。
同日付読売新聞夕刊によると、前社は、1昨年秋ごろから1年半の間に、約2000人の顧客から22~3億円を、後社は、約180人の顧客から約2億円を集めたと報道されています。業界全体では約7万人のオーナーから約1000億円を集めたと見られています。
東京3会では、6月2日午前10時から午後4時まで110番を実施し、15本の電話を用意するという異例の体制で臨みましたが、朝から電話がなりっぱなし。最終的に413件の相談が殺到する事態となりました。
農水省の統計によると、平成3年に牛肉の輸入が自由化されて以後、和牛1頭あたりの利益は赤字傾向が続いており、平成5年~7年まで赤字。平成8年も売却単価75万2312円の内1万6829円の黒字が出ているにすぎません。しかも1社を除いてすべての業者がこれまで1度も和牛売却の実績がありません。ですから元本保証や高配当をうたうこと自体が詐欺罪にあたる可能性もあります。
強制捜査とマスコミの報道を通じて、和牛預託商法は経営リスクと出資法違反というリーガルリスクを伴う商法であることが明らかとなりました。新たな顧客を開拓することで伸びてきた和牛預託業者が、今後は次々と破綻する可能性が生じています。既に破綻の兆候がある業者も出始めました。その場合、KKCやココ山岡以上の大規模な消費者被害事件に発展する可能性があります。既に110番実施前にも、不安を感じたオーナーが多数弁護士会の法律相談窓口に殺到し、1時相談事務が混乱するという事態がありました。
消費者事件の救済でいつも思うことですが、現状の弁護士会の法律相談体制では、和牛預託商法のような弁護士人口をはるかに越える大量の被害者が出る消費者事件に即応でき
ません。会に相談が殺到するような緊急時の相談体制を予想していないからです。昨年のKKCやオレンジ共済の場合もそうでしたが、このような事態が生じた場合、110番とは別に法律相談窓口でも対応できる仕組みが必要だと思います。相談場所の確保や特別案件相談者リストの作成は最低限必要ですが、あっせんの省略や、クレサラ事件の報酬基準のように、報酬規定を関連委員会の意見で暫定的に変更して処理できるような柔軟な処理も必要だと思います。
弁護士会が、真に市民に開かれた法律相談体制を目指すなら、心配して駆けつけてきた相談者が、いち早く弁護士にたどり着けるような体制作りが緊急の課題だと思います。
(消費者問題対策委員会 紀藤 正樹)
2 当時の和牛預託商法関係5弁護団について
既に以下の5弁護団は解散していますのでご注意ください。
お困りの方は、各地の弁護士会へ
□和牛の里共済牧場被害対策弁護団
□あさぎり高原共済牧場被害対策弁護団
□ふるさと共済牧場被害対策弁護団
□みちのく都路村共済牧場被害対策弁護団
□軽井沢ファミリー千紫牧場 /安愚楽共済牧場被害対策弁護団
3 その後の摘発経過
・1999年2月26日付け読売新聞夕刊によると、浦和地裁は、1997年5月に摘発された軽井沢ファミリー千紫牧場の元社長に、詐欺と出資法違反により懲役5年(求刑7年)の有罪判決を言い渡したたとのことである。和牛商法での詐欺罪の適用は初めて。少なくとも和牛預託商法が出資法違反だとすると、他の和牛預託業者にいまだ強制捜査がなされないのは、不平等、不正義であり、不可思議と言うほかない。実刑判決を受けた元社長もそう思っているに違いない。 UP99/03/01
・1999年4月21日付け朝日新聞速報によると、和牛預託業者「ジェイファーム」元社長に、出資法違反により懲役2年(求刑懲役3年)が言い渡された。UP99/04/21
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