豊後大野ストーカー・4歳女児殺害事件(2005.12.07)
紀藤のコメントが掲載されています。読売新聞の大分版に掲載されています。
検証おおいた
「なぜ守れなかったのか」~豊後大野・4歳女児殺害(2005.12.07)
現場となった被害者方を現場検証する捜査員(豊後大野市三重町で)
豊後大野市三重町で、無職の男が元交際相手の女性の娘(当時4歳)を殺害し、女性にも重傷を負わせるという事件が起きてから約1か月半。女性に対し、執拗(しつよう)にストーカー行為を繰り返した末の犯行であり、女性側は事前に警察に相談していただけに、「なぜ、守れなかったのか」と、警察の対応を問題視する声も上がっている。ストーカー規制法の施行から5年。事件は、ストーカー問題の難しさと、それに対応する警察組織の問題点を浮き彫りにした。(新地英貴)
■被害者側の批判
事件後の警察発表によると、被害者は事件の2週間前の10月5日、豊後大野署に男のストーカー行為について相談に訪れ、「できれば逮捕してほしい」と訴えた。だが、無理な場合は子供に危害が加えられるのを恐れ、接触して刺激しないように要望したという。その後、子供がぐずったため、この日、同署員は詳しい話を聞けずじまいで、後日また訪れるよう進言するとともに、自宅周辺のパトロールを行った。
だが、女性の親族らは、この日の相談時、男が夜間、女性の自宅に押しかけてきたことや、刃物をちらつかされたことなど具体的被害を伝えたと反論。「警察は無言電話に対するNTTの着信拒否機能などを教えるだけで、具体的には何もしてくれなかった」と批判する。
■警察組織の問題
一連の豊後大野署の対応について、県警側は調査のうえ、「問題はなかった」と結論づけたが、「警察組織の本質的な問題が絡んでいる」とみるのは、ストーカー問題に詳しい紀藤正樹弁護士(第2東京弁護士会所属)だ。同弁護士によると、ストーカー規制法の施行以来、ストーカーは民事ではなく、警察が扱う問題であることが周知徹底され、対応は大きく前進した。
その一方で、「実際の現場では、相談窓口と刑事警察との連動が悪い」とも指摘する。今回の事件もそうだが、ストーカー問題は対応を急ぐべきケースが多い。「相談が来たときにすぐに現場に行き、話を聞くだけで終わらせないようにすることが必要だが、現実には規模の小さな署には動ける署員が少ない」と同弁護士は言う。
豊後大野署の署員も約60人と、県内17署の中でも8番目に少ない。日々寄せられる事件事故や様々な相談に対応するだけの人員がそろっているとは言い難いのが現状だ。
■求められる再検討
県内で年間に寄せられる相談件数は、法が施行された2000年が10件だったのに対し、02年には87件、03年からは100件を上回るなど相談件数は急増傾向にある。
県警によると、相談の多くは、全く見ず知らずの人間からではなく、今回のように元交際相手や配偶者からの被害を訴えるケースが圧倒的に多い。プライバシーに深くかかわる問題でもあるため、相談者自身が詳しく話したがらないケースも少なくない。さらに、別れ話のもつれや金銭問題が絡んでいることもあり、トラブルの全体像がつかみにくく、対応に苦慮することも多いという。
「何かあってからでは遅いのに警察は何もしてくれなかった」と憤る被害者の親族と、「おれらは何か(容疑)があったらいつでも捕まえたいと思っているんだ」と漏らした現場の署員。一見、正反対のようだが、どちらもストーカー問題の難しさを物語っている。ただ、同じような悲劇を防ぐためには、県警の言うように「署の対応に問題はなかった」としても、「女性を守るため、何かできることはなかったのか」再検討することは必要だろう。事件は26日初公判を迎える。
◇ ◇
【事件の概要】10月19日午前8時半ごろ、豊後大野市三重町で、飲食店従業員の女性(22)方に元交際相手の同町市場の無職、小野修被告(31)が侵入し、女性の長女(4)を包丁で刺し、失血死させた。さらに、女性にも重傷を負わせた。被告は11月17日、殺人罪などで起訴されている。
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コメント
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警察は事件を未然に防ぐ、(起きてしまった)
事件を解決するのが仕事と思っている。でも大抵は事件解決に重点が置かれていると言わざるをえない。要するに、警察は事件が起きてからじゃないと行動しない組織ってこと。
昔から人間社会は、自分の身は自分で守るのが大原則と言える。小さな子供には酷だけど、それが現実です;x;
親が子供の餌を捕りに行った隙に、別の動物が子供を食べるというのはTVでよく見るシーン。
人間社会のレベルではなく、生命体のレベルで考えたとしても、例え子供であっても「自分の身は自分で守る」しかない・・・・・・・・
壁|x;ノシ
投稿: 尚香 | 2006.03.08 09:32