姉歯(あねは)建築設計事務所の建築確認詐欺事件-日弁連が予想していた事態に国の責任は重い。
2005年11月18日、突如発覚した姉歯(あねは)建築設計事務所による構造計算書の偽造問題については、直前、2005年11月10日から、鳥取で開かれたにおいて、日弁連 - 安全な住宅に居住する権利を確保するための法整備・施策を求める決議がなされて、
「当連合会は、既存不適格住宅を含むすべての欠陥住宅をなくして、安全な住宅に居住する権利を確保するため、国に対し、下記のような法整備・施策の実現を求め、ここに決議する。記
1 安全な住宅に居住する権利が基本的人権であることを宣言し、関係者の責務や安全な住宅の確保のための基本的施策を定める「住宅安全基本法」(仮称)を制定すること。
2 建築士の監理機能の回復のために、建築基準法、建築士法の改正を含め、建築士について、その資質向上を図り、かつ、施工者からの独立性を担保するための具体的措置を講ずること。
3 建築確認、中間検査、完了検査制度の徹底及びその適正性確保のため、一層の制度改善を図ること。
4 建築物の耐震改修の促進に関する法律を改正し、住宅を含め耐震基準を満たさない建物について、耐震改修促進のための施策を充実させること。
2005年(平成17年)11月11日
日本弁護士連合会」
と決議されたばかりなのに、心配してきたことが現実におきた感じです。
日弁連の問題意識は、提案理由もあわせて読んでいただけるとよくわかると思います。
それにしても日弁連の決議は、今回の事態を予想したそのまんまの現行法制批判決議です。
日弁連が予想していた今回の事態は、当然、国の責任を予感させます。
国は、まず事業者に頼らず、消費者、市民の生命身体の安全を確保すべき立場にあり、費用を立て替えてでも、入居者の引越しをお手伝いしたうえで、問題建物の補修、解体に早急に着手すべきです。
ちなみに、数年前、日弁連は、建築主事が行ってきた確認検査業務を民間に開放することについて、「検査機関を株式会社にしてしまうと利潤追求のため業者が喜ぶ方向での検査を競い合うようになり、消費者の利益が侵害される」などと強く反対した経緯がありますので、まさしく今回の事態は予想しえた事態だと言えます。
建築基準法上からは導き出せませんが、立替費用は、あとから事業者に請求しても、民法第474条(第三者の弁済)規定からしても、別段、問題はないと思います。
もし人命にかかわることが起きれば、国の責任は必至だと思います。国は、10月にはこの問題を知っていたと思われ、現時点でも対策が遅すぎます。
[参考]
■日弁連の第48回日弁連人権擁護大会-毎日新聞 2005年11月5日付け
日弁連 - 安全な住宅に居住する権利を確保するための法整備・施策を求める決議
■イーホームズ株式会社
■シノケン.
[法令参考]
建築基準法だと、50万円以下の罰金にしか問えない(20条、101条)が、今回の事件が出てくるようだと、刑罰が軽すぎると思う。
日弁連人権擁護大会:憲法、正面から議論 「役割など理解深めたい」 /鳥取
◇鳥取で10、11日
第48回日弁連人権擁護大会が10、11の両日、鳥取市尚徳町の県民文化会館などで開かれる。日弁連は今回、改憲論議が起きている憲法を初めて正面から取り上げる。日弁連は「改憲の是非や方向性についてではなく、議論するに当たって憲法の果たしてきた役割や意義について、理解を深めていきたい」としている。【山下貴史、田辺佑介】
鳥取県で同大会が開かれるのは初めて。大会ではこれまで、有事法制3法案の廃案を求めるなどの個別案件について、現行憲法に基づく見解を示したことはあったが、憲法そのものは取り上げてこなかった。
10日は午後0時半~同6時、3分科会に分かれたシンポジウム(入場無料。希望者のみ資料代2000円)を開催。分科会ではそれぞれ(1)憲法改正論議の検証(2)高齢者・障害者福祉(3)地震と防災・住宅--をテーマに意見交換する。11日は午前10時から、同会館に弁護士約1200人が集まり、憲法問題に関する宣言や高齢者・障害者問題、住宅問題に関する決議を採択して閉幕する予定。
第1分科会(県民文化会館)は「憲法は、何のために、誰のためにあるのか」と題し、樋口陽一・東大名誉教授やジャーナリストの斎藤貴男氏らが出席。衆参両院に設置された憲法調査会の最終報告書などを通して改正論議を検証する。第2分科会(同市天神町・県立鳥取産業体育館)は「いつまでもこの地域で暮らしたい」と題し、高齢者・障害者が地域で自立した生活を送るための福祉のあり方を議論。第3分科会(県民文化会館)は「日本の住宅の安全性は確保されたか」と題し、阪神大震災10年の検証や欠陥住宅被害の課題などを取り上げる。問い合わせは県弁護士会(0857・22・3912)。
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