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2016.11.30

謝罪で済まない ASKA タクシー車内映像報道の違法性

タクシー会社チェッカーキャブは、本日11月30日午後、28日に覚醒剤取締法違反の疑いで逮捕されたASKA容疑者の直前のタクシー車内の映像を、テレビ各局に提供したことを認めて謝罪しました。

しかし犯罪映像でもない安易な映像提供は、個人情報保護法に違反する。謝罪だけでは済まない事態というべきです。

報道の自由や国民の知る権利を前提としても、今回のタクシー内の私的な会話の映像に「公益性」があるとは言い難く、報道機関の報道の在り方としても問題が残り、ASKA容疑者やその家族が、BPO(放送倫理・番組向上機構)に申し立てをするまでもなく、当然に、BPOの審査入りがあり得る事態だろうと思います。

 →BPO放送倫理検証委員会=被害者からの申し立ては不要=つまり職権  窓口:視聴者からの意見

 問題があると指摘された番組について、取材・制作のあり方や番組内容について調査。放送倫理上の問題の有無を、審議・審理し、その結果を公表します。

 →BPO放送人権委員会=被害者及びその利害関係人からの申し立てが必要 窓口:申し立て方法

 「放送によって人権侵害を受けた」との申立てを受けて審理します。

個人情報保護法の主位的所轄官庁は消費者庁です。しかもタクシー利用者も消費者です。二重の意味で、個人情報保護法を所管する消費者庁はただちに調査に入るべきです。

またタクシーを所管する道路運送法上も、こうした個人情報のずさんな管理には問題があります。同法を所管する国土交通省は、タクシー会社との関係では、個人情報保護法については、消費者庁と共管官庁となります。

つまり国土交通省は、個人情報保護法及び道路運送法に基づき、タクシー会社チェッカーキャブに対し報告徴求を促し、そのうえで、「どうして今回の個人情報が流出したか」の経緯も含めて公表し(この点が解明できなければ再発防止策が構築できない。)、個人情報管理徹底の行政指導が必要な事態です。

場合によってはタクシー事業の業務停止、許可取り消しもありうる深刻な事態というべきです。

ネット上では、今回の映像に対する批判があいつぎ、タクシーの車内映像をマスコミに流したタクシー会社の詮索が始まっていた矢先に、今回、先に謝罪がなされた形ですが、今回の問題は、謝罪だけではすまされない、と思います。

しかも今回の謝罪も、「どうして今回の個人情報が流出したか」の経緯が公表されておらず、中途半端なものですし、録画の理由も、「これには、防犯の観点の他、万が一の事故などの原因解明に活用することで、「安全・安心」の更なるレベルアップにつなげる目的もございます。」などと、「客」=消費者保護の視点が全く抜けています。

ドライブレコーダでの録画は、犯罪防止だけでなく、運転手とのトラブルがあった場合にも、それを確認し対処する、お客のためのものでもあります。

明らかな遠回りや乱暴な言葉遣いなど、消費者にとって、悪質なドライバーを駆逐させる効果も大きいし、実際、録画が決めてとなって、消費者の苦情を受け、タクシー代金が返還されたケースも既に出ています。

つまり今回の謝罪文のような記載、すなわちドライブレコーダでの録画に対する、タクシー会社の自社優先の管理の発想が、今回の個人情報の安易な流出を許したのではないかとも懸念されます。

消費者庁及び国交省は、早急にタクシー会社に対して調査を入れ、今回の事態が発生した経緯や原因などを公表し、再発防止策を講じさせるべきです。

現代社会においては、ドライブレコーダは、レンターカーなどにも広がっており、一般消費者にとっては、その管理の徹底は、焦眉の課題になっていることもあり、なお一層、所轄官庁及びその担当大臣の役割は大きいです。

注※こうした紀藤の意見の一部は、J-CASTニュースにも取り上げられていますが、ちょっと詳しめに書いてみました。

ASKAタクシー映像 放送TV局「BPO審議入り」の指摘 - Yahoo!ニュースJ-CASTニュース 11/30(水) 17:33配信

[参考]

チェッカーキャブ

・株式会社チェッカーキャブの謝罪文=以下の下線は紀藤が付したもの

この度のチェッカーキャブ加盟会社の車内映像がテレビ等マスコミ各局にて放送されている事態につきまして」

お知らせ

2016年11月30日 この度のチェッカーキャブ加盟会社の車内映像がテレビ等マスコミ各局にて放送されている事態につきまして   

この度、チェッカーキャブ加盟会社の車内映像がテレビ等マスコミ各局にて放送されている事態となっております。

チェッカー加盟各社の車両では、ドライブレコーダーによる車内外の様子を記録しております。これには、防犯の観点の他、万が一の事故などの原因解明に活用することで、「安全・安心」の更なるレベルアップにつなげる目的もございます。

映像の活用は、法令又は条例の規定に基づく場合を除くほか、事故・トラブル等の確認及び事故分析、原因究明、ヒヤリハット情報の収集 、安全運行に資するための研修教材の作成及び安全運転教育への活用 、ドライブレコーダー導入車両による安全運転指導の実施などへの活用にとどめ、記録映像は運行 管理統括部長などの管理者が厳重に管理することとしております。

また外部への映像提供にあたっては、刑事訴訟法の規定に基づく捜査機機関からの文書による照会に応じて提供する場合、ならびに事故やトラブルの状況及び原因を明らかにするために、その当事者、保険会社、捜査機関に提供する場合のみとしております。

現在、マスコミ各社にて放送されている映像は、当グループ加盟の1社よりマスコミへ提供されたものでございますが、これは上記のような映像提供の事案には当たりません。映像提供を行った社に対しては、グループとして厳罰をもって対応し、記録映像の管理徹底を図らせる所存であります。

放送された映像の関係者の皆様におかれましては、大変なご迷惑とご心配をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。また、平素よりチェッカーグループをご利用いただいております皆様におかれましても、多大なるご迷惑をおかけいたしましたことを重ねてお詫びいたします。

当グループでは、これまでも記録映像にあたっては、加盟各社に対し厳格な取り扱いを求め情報管理の徹底に努めてまいりましたが、このような映像提供が発生したことを踏まえ、今後は更なる厳格化をはかって再発防止に全力で取り組んでまいります。

平成28年11月30日

株式会社チェッカーキャブ代表取締役社長
チェッカーキャブ無線協同組合理事長

安田敏明

消費者被害を引き起こす恐れがあったDeNA運営の「WELQ [ウェルク] | ココロとカラダの教科書」の前代未聞の全記事非公開化

時間の問題で、消費者被害を引き起こす恐れがあったDeNAが運営する「WELQ [ウェルク] | ココロとカラダの教科書」が、2016年11月29日21時に、前代未聞の全記事非公開化に踏み切りました。

これが公表されたWELQ本体とDeNAのサイトに公表された文面です。

ほぼ同じ文面ですが、DeNAのサイトに公表された文面の方が、対策などに触れられています。

念のため、ログとしてアップしますが、医療記事について、何ら検証のないメディアを登場させた上場企業DeNAの責任は甚大です。

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WELQ [ウェルク] | ココロとカラダの教科書


【お知らせ】

WELQの全記事の非公開化について

 株式会社ディー・エヌ・エー(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長兼CEO:守安 功、以下DeNA)は、ヘルスケア情報を扱うキュレーションプラットフォーム「WELQ(ウェルク)」におきまして、医療情報に関する記事の信憑性について多数のご意見が寄せられたことを受け、検証および精査した結果、本日11月29日(火)21時をもって全ての記事を非公開といたしました。また同時に、現在WELQで取り扱いのある全ての広告商品の販売を停止いたしました。

 ご利用いただいている皆様ならびに、広告主の皆様には、多大なるご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。

 医学的知見を有した専門家による監修がなされていない記事が公開されていたことに関して、かねてより進めている医師や薬剤師などの専門家による医学的知見および薬機法※をふまえた監修体制を速やかに整えます。その上で医学的根拠に基づく監修が必要な記事においては順次監修を行い、皆様に安心してご利用いただける状態にしたのち、WELQ編集部名義で記事を掲載していく方針です。

 医療情報以外の非公開化記事に関しては、WELQ編集部にて記事の品質を確認したうえで公開判断を行います。

 株式会社ディー・エヌ・エー:当社運営のキュレーションプラットフォームについて

※ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)


本件に関するお客さまからのお問い合わせ先
メールによるお問い合わせ https://welq.jp/reports/new

2016年11月29日

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株式会社ディー・エヌ・エー:当社運営のキュレーションプラットフォームについて 

2016年11月29日

 株式会社ディー・エヌ・エー(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長兼CEO:守安 功、以下DeNA)は、ヘルスケア情報を扱うキュレーションプラットフォーム「WELQ(ウェルク)」におきまして、医療情報に関する記事の信憑性について多数のご意見が寄せられたことを受け、検証および精査した結果、本日11月29日(火)21時をもって全ての記事を非公開といたしました。

  ご利用いただいている皆様には、多大なるご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。

  医学的知見を有した専門家による監修がなされていない記事が公開されていたことに関して、かねてより進めている医師や薬剤師などの専門家による医学的知見および薬機法※をふまえた監修体制を速やかに整えます。その上で医学的根拠に基づく監修を順次行い、皆様に安心してご利用いただける状態にしたのち、WELQ編集部名義で記事を掲載していく方針です。

  なお、キュレーションプラットフォームの運営にかかる社内体制強化のため、代表取締役社長兼CEOの守安を長とする管理委員会を直ちに設置します。当社運営のキュレーションプラットフォームは、編集部独自記事および外部ライターへの依頼記事だけでなく、一般ユーザーによる自由投稿による記事掲載も可能な形で運営しておりますが、本管理委員会を通じて、一般ユーザーが作成・投稿した記事のチェック体制強化など信頼性を担保できる仕組みを整備していくとともに、編集部独自記事や外部ライターへの依頼記事等につきましても、品質の向上に向けた改善を進め、より一層価値のある情報提供に努めてまいります。

※医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する法律(薬機法)

[参考記事]

DeNAが「WELQ」全記事を非公開に 不正確な医療情報に相次いだ批判「深くお詫び」 (BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース= 11/29(火) 21:26配信

DeNAの「#WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか。現役社員、ライターが組織的関与を証言  (BuzzFeedJapan)=posted 2016/11/28 19:49  井指啓吾 BuzzFeed News Reporter, Japan 

 

2016.11.16

「せどり」初摘発!>古本ネット転売、「稼げる」とうその疑い 3人を逮捕

最近、「競取り(せどり)がもうかる」などというネット上の都市伝説が広がっていますが、今回は、初の「勧誘」側の摘発となりました。

実際今回の摘発でも、下記の朝日新聞2016年11月15日付け報道によると、「購入者は「転売後の利益はほとんどなかった」「一番多くて月に千円ほどだった」などと話しているという。」と報道され、新手の内職商法とも評価できる「悪徳商法詐欺事案」だろうと思われます。

摘発は、消費者被害の摘発では定評のある宮城県警です。

今回摘発されたクリック・スクエアに関しては、3年くらい前からネット上では苦情が出始めていたようです。 →Yahoo知恵袋=「㈱クリックスクエアという会社から連絡があり」=2013/11/21 15:34:09

なお
せどり行為は、

「せどり」という言葉自体が商取引用語であり、一般の市民が行う行為であっても、事業行為にあたることが一般に明らかであり、事業者規制がかかることになります。

ですから、今回のように取り扱う商品が古本のように古物であれば、古物営業法の規制にかかり、また取り扱う商品が新品であっても、通信販売として、特定商取引法の規制が、それぞれかかることに注意しなければなりません。

すなわち前者の場合は、古物営業の許可を経ないで、古物販売を行えば犯罪となり逮捕される可能性がありますし、後者であれば、ネット上の取引は通信販売として、通信販売規制である、事業者の明示等が必要となり、行政処分を受ける可能性があります。

「せどり」が安易に儲かるなんて言う、ネット上の都市伝説に、惑わされないようにしなければなりません。

今回の摘発は、せどりの勧誘側の摘発であり、今後、販売側の摘発があるかもしれませんので、今回の逮捕は、消費者に対して、安易な「せどり」を行いわないようにとの警鐘ともいうべきものかもしれません。

最近、2013年7月3日のスマホアプリ「メルカリ」の開始により、以前は、ヤフーオークションなどで見られた「せどり」が、オークションサイトの枠を超えて、消費者問題として浮上しています。

しかしここで気をつけないといけないのは、オークションは、その言葉自体が「自分のものを出品する」という意味を含意する言葉であり、オークションサイトでの「事業者販売行為」は、むしろ病理現象として例外的事象であるのに対し、「せどり」はそもそも商取引用語であり、「せどり」で儲けるというのは、もはや、原則として事業者規制を受けるということを十分に理解して、始める必要があるということです。

結局、「うまい話に気をつけろ」~これは「ネット社会」においても同様にあてはまることに、留意すべきだろうと思います。

気を付けてほしいものです。


[参考]=これから「せどり」を事業者として始めようと考えている人も、下記の解説をよく読まれ、法をきちんと順守されることをおすすめします。

古物営業法
警察庁による解説

特定商取引法
消費者庁による解説


[参考記事]
古本ネット転売、「稼げる」とうその疑い 3人を逮捕 (朝日新聞デジタル) =2016/11/15

「絶対に赤字にならない」などとうそをつき、古本店で購入した書籍をインターネットで転売する「せどり」による副業をもちかけたとして、宮城県警は15日、仙台市に事務所を置いていたソフト開発会社「クリック・スクエア」の実質経営者、伊藤雅基容疑者(46)=東京都港区=ら3人を、特定商取引法違反(不実の告知など)の疑いで逮捕し、発表した。

ほかに逮捕されたのは菊池貴洋(43)=岩手県奥州市=と佐藤信弘(55)=仙台市泉区=の両容疑者。

生活環境課によると、伊藤容疑者らは昨年7月ごろ、副業サイトに登録した京都市内の女性(42)や東京都内の女性(39)に電話をかけてせどりをすすめ、「1日2時間くらいで月に7万~8万円稼げます」などとうそをついた疑いがある。また、契約の際にクーリングオフ期間を規定よりも短く書いた書面を配布していた疑いがある。

誘いに応じた人には入会金を払わせたり、古本の転売可能価格を調べるためのバーコードリーダーのような機材などを約30万円で購入させたりしていた。伊藤容疑者らが全国の200人以上から約6800万円を得たと県警はみている。購入者は「転売後の利益はほとんどなかった」「一番多くて月に千円ほどだった」などと話しているという。

2016.11.09

米国格差社会がもたらした「トランプ大統領の誕生」という逆説

このワシントンポストの記事を見ると(ほかにもいくつか選挙動向の統計が出ていますが)、今回の選挙結果は、白人の中産階級以下、特に白人低所得者層(しかも高齢者)の不満が、トランプに向いたというものです。

「Clinton and Trump’s demographic tug of war」=タイトル訳「人口動態でみたクリントンとトランプの勢力争い」=ただし英語記事ですが、英語がわからない人でも、表は、だいたいわかると思います。

図式的にわかりやすく言うと、米国の白人負け組の反乱ですが、米国において、白人負け組が、実質的に過半数を超えたという面が見逃せません。

つまり投票行動だけ見れば、1国資本主義、Brexit(イギリスのEU離脱)の動きと同じ流れの中にあり、さらに世界全体的な流れからいうと、ピケティ流の資本主義の行き詰まり、格差社会の行きつく果ての結果が、支配層への反乱ではなく、逆説的に、本来の支配層である白人右翼政権の樹立に向かったとも言えますので、非常に悲劇的です。

この点、トランプが、自分の「品位」とは対極にある共和党最右翼キリスト教保守派で、中絶禁止、離婚反対等、家族主義を主張するペンスを副大統領候補に選んで、トランプの不道徳な面にパッチをはめて共和党の反対層やトランプの品位のなさを心配する層を取り込む戦略をとったのに対し、逆にクリントンが、資本主義が必然的にもたらす「格差」という悪弊を根本から考え直そうとし、格差の根本的是正を訴えたサンダースを副大統領候補に選ばず、米国内の社会的弱者への配慮を、十分に示さなかったことが、とても悔やまれます。

その時点では、風向きがクリントンに向いていましたので、世論を甘く見たのだろうと思いますが、今となっては、それでも、ダメを押すべきであったことは明らかであり、完全な戦略ミスの類です。

ただ経済的自由主義(トランプ)と道徳保守主義(ペンス)のミックスという面もあり、うまくいけば、レーガン大統領のレーガノミックスの路線とも似てくる可能性がありますので、この政権の将来は、日本にとっても、米国にとっても、世界にとっても、非常に微妙です。

どうなることやらです。クリントンなら、特に変化がなく、安心できたのですが・・・・

ただこれも安定を望む、自分も、そして日本も、それなりの立場になったという感性がなせる業なのか、と、今回の選挙の衝撃に、自問自答しています。

なお僕自身は、資本主義のシステムを現状のままこのまま放置すれば、さらに格差は広がるばかりですから、米国の変革、いな、世界の変革は、このままでは終わらないと、思っています。

{参考}
トランプ氏勝利の背景に深い政治不信=米大統領選:時事=2016/11/09-16:52

2016.11.02

リスク管理すらできなくなった集団暴行疑惑の慶応大学のおごり

今回の慶大集団暴行疑惑事件で、慶応大学のコメントがあまりにひどいので、黙っていられなくなり、僕の意見を記載します。

はっきり言えることは、今回のコメントが、「事件性を確認」というキーワードからも明らかなように、だめな「法律家」の典型的なコメントとなっており、最終的にゴーサインを出した慶応大学の顧問弁護士(もしくは法務担当の教授)の稚拙さ、そしてこの稚拙なコメントを発することに何の違和感を持たない、世間感覚とずれた慶応大学の体制は、現状、最悪だろうと思います。

慶応大学の専門家集団としての「おごり」すら感じるコメントです。
すぐに慶応大学は、一般の国民の視点にたち、何がだめであったかを確認し、体制を刷新、この「おごり」を改めるべきです。

慶応大学の公式コメントは、あまりにも中立性を欠き、被害者側へのセカンドレイプにもなりかねません。

慶応大学が、

「複数回にわたり関係者に事情聴取を行う等、大学として可能な限りの調査を行いましたが、報道されているような事件性を確認するには至りませんでした。」
「大学としては自ら事件性を確認できない事案を公表することはできず」

などと記載するのは、明らかに書きすぎです。

これでは、どんなに「捜査権限を有しない大学の調査には一定の限界があります。」との限定(エクスキューズ)を付したとしても、それがどんなに法律実務家にとって、常識的な言い訳であったとしても、一般の人からは、大学の調査では、「事件性がなかった」ように読め、加害者を利する結果につながります。

捜査権限を有しないのであれば、事件は、大学としては「真偽が不明」なはすです。
「事件性が確認できない」と断定するのではなく、端的に「真偽が不明」と書けばよいだけです。

「真偽が不明」と書くことこそが、中立性の証です。

慶応大学の論調は、弁護する側の弁護士が発表するなら、まだわからないでもありません(たとえば舛添元都知事の第三者委員会と称する「弁護士の発表」とか、高畑事件における「弁護人の発表」とかです。)が、それでも「あなたは事実認定という言葉を知らない」などという、第三者と称しながら、舛添氏側に立つかのような佐々木善三弁護士の言葉は大きく批判を受けて、舛添氏が都知事を辞任せざるを得なくなったことは、記憶に新しいところですし、高畑事件においても、週刊現代=高畑裕太「レイプ事件」被害者女性が初告白!あの夜起こったすべてのこと=2016/10/14)などの記事もあり、女性被害者団体などからの批判が続いています。

つまり「事実は認定できない」という断定は、どうしても「事実はなかった」という形で読めるのです。
そもそも裁判でも、「事実が認定できない」のであれば、敗訴です。それが法律の専門家的帰結です。

リスク管理の専門家を標ぼうする弁護士は、「事実が認定できない」という言葉が、それほどきつい語感を伴った言葉であることを心しなければなりません。

まして慶応大学は、男性側の弁護人ではありませんし、教育機関です。主観的な意図はともかくも、少なくとも中立性は必要です。

「事件性が確認できない」という「事実を認定する」こと自体が、中立性を害しているということを心しなくてはなりません。

「確認できない」ではなく、「確認できる、できない」の前に、「真偽不明」であることを明らかにすべきだろうと思います。

そのうえ、慶応大学野姿勢は、仮に強姦事件でなかったとしても、セクハラ事件であった可能性も十分あるのですから、教育機関として、事件の確認を、安易に捜査側にゆだねるのにも問題があります。

今回は、被害者側の言い分が本当なら、学内でおきたセクハラ放置(しかも重篤な)の事案ということになりますので、慶応大学の対応のひどさが目立ちます。

こんな感じでセクハラ事案が処理されるとなると、普通のセクハラでも、加害者側の言い分だけを聞いて終わりということになりかねません。

セクハラ事案である以上、本来なら、学内のセクハラ対策委員会に、事案の審理をかけるべきだろうと思います。

それでも慶応大学は、「捜査機関でない」と言い訳しそうですが、それなら「捜査中」は、「セクハラ対策員会」の審理を継続させておけばよいだけで、そうした発表を慶応大学がしていれば、全然違った結果だったと考えられます。

ちなみに慶応大学には、慶應義塾ハラスメント防止委員会が、きちんとあるのです。

ホームページを見ると、「いやなこと、しない、させない、許さない。慶應義塾は、国際的な教育・研究・医療機関として、また、気品の泉源・智徳の模範たることを願って発展してきた組織として、いかなるハラスメントも容認しません。」 「中立性について ハラスメント防止委員会はどの学部・組織にも所属せず、ハラスメント防止委員会担当の常任理事を介して、直接、塾長に つながっています。 (下線は紀藤) また、ハラスメント問題に対応できるリーガル・アドバイザー(弁護士)と、適切なカウンセリングのできる精神科医もメンバーになっています。」などと、素晴らしい言葉が並んでいます。

それがなぜ今回、慶応大学は、女子学生=被害者の声に、真摯に耳を傾けなかったのでしょうか。

女子学生は未成年なのにテキーラを10杯(「以上」という報道もあります。)飲まされたということですが、それ自体が、計画的としか思えませんし、端的にその後の「事件」とあいまって、セクハラとも評価できます。

テキーラを大量に飲ませたということが事実だとすれば、なぜ慶応大学が真摯に女性の言い分に目を向けなかったかが疑問ですし、それこそ男子大学生の両親と大学との「密接」な関係があったとか、そういった疑問すら呈さざるを得ない事態だろうと思います。

今回、あまりに稚拙な慶応大学の発表に驚きましたし、最近、稚拙な「リスク管理」を標ぼうする弁護士が目立ち、かえって依頼者を不利益に落とす弁護士が散見されますので、あえて意見を述べさせていただきます。

なお僕なら、本文を、概略、次のとおり訂正します(本当に依頼されたらもう少し訂正したいところですが・・・)。

「その後、告示文に明記した解散事由以外にも違法な行為があった、と一部報道がなされております。今回の解散処分にあたっては、複数回にわたり関係者に事情聴取を行う等、大学として可能な限りの調査を行いましたが、報道されているような事件性を確認するには至りませんでした。もとより、捜査権限を有しない大学の調査には一定の限界があります。一部報道にあるような違法行為に関しては、捜査権限のある警察等において解明されるべきであると考えます。大学としては自ら事件性を確認できない事案を公表することはできず、したがって、{現在は学内の「ハラスメント防止委員会」での審理を継続しているところです。=挿入}一部報道されているような情報の「隠蔽」の意図{はなく、=挿入}も事実もありません。なお、事件性が確認されるような場合には、捜査等の推移を見守りつつ、厳正な対処を行うというのが、従来からの慶應義塾の方針です。」

つまりきれいに記載すると

「その後、告示文に明記した解散事由以外にも違法な行為があった、と一部報道がなされております。今回の解散処分にあたっては、複数回にわたり関係者に事情聴取を行う等、大学として可能な限りの調査を行いましたが、もとより、捜査権限を有しない大学の調査には一定の限界があります。現在は学内の「ハラスメント防止委員会」での審理を継続しているところです。一部報道されているような情報の「隠蔽」の意図はなく、事件性が確認されるような場合には、捜査等の推移を見守りつつ、厳正な対処を行うというのが、従来からの慶應義塾の方針です。」

という記述になります。

ところが現実には、下記が、元の慶應義塾大学の発表です。

事実関係の進展の中で、セクハラ事案を放置した慶応大学という図式がかえって浮かび上がってしまいました。

これでは失った信頼を回復するのは相当難しいと思います。

慶応大学の先生だって、塾長だって、法学部の教授だって、実務法律家としてまったくの素人だと思いますが、
いくらなんでも、自分で考える英知を放棄しすぎです。世間常識に合致したコメントを考えるべきだろうと思います。リスク管理の専門家だと思って弁護士を信頼しすぎるのは、間違いであるという典型的な事案だろうと思っています。


ー記ー

・慶應義塾大学の発表文=>「広告学研究会」の解散命令に関わる一部報道について

2016/10/12

慶應義塾大学
さる10月4日、公認学生団体「広告学研究会」の解散を命ずる告示文を学内掲示およびウェブサイトで公表しました。(告示)

その後、告示文に明記した解散事由以外にも違法な行為があった、と一部報道がなされております。今回の解散処分にあたっては、複数回にわたり関係者に事情聴取を行う等、大学として可能な限りの調査を行いましたが、報道されているような事件性を確認するには至りませんでした。

もとより、捜査権限を有しない大学の調査には一定の限界があります。一部報道にあるような違法行為に関しては、捜査権限のある警察等において解明されるべきであると考えます。大学としては自ら事件性を確認できない事案を公表することはできず、したがって、一部報道されているような情報の「隠蔽」の意図も事実もありません。

なお、事件性が確認されるような場合には、捜査等の推移を見守りつつ、厳正な対処を行うというのが、従来からの慶應義塾の方針です。

慶應義塾ハラスメント防止委員会
「いやなこと、しない、させない、許さない。
慶應義塾は、国際的な教育・研究・医療機関として、また、気品の泉源・智徳の模範たることを願って発展してきた組織として、いかなるハラスメントも容認しません。」

中立性について
 ハラスメント防止委員会はどの学部・組織にも所属せず、ハラスメント防止委員会担当の常任理事を介して、直接、塾長に つながっています。 (下線は紀藤)
また、ハラスメント問題に対応できるリーガル・アドバイザー(弁護士)と、適切なカウンセリングのできる精神科医もメンバーになっています。

・セクハラ防止委員会を直轄する慶応義塾大学の塾長の清家篤氏は、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議のメンバー」になっています。→PDF http://www.kantei.go.jp/jp/singi/koumu_keigen/pdf/sechikonkyo.pdf


[参考記事]

慶大集団暴行、被害者を突き放す大学の姿勢に批判 「慶応には娘を預けられないと思われても仕方がない」 (デイリー新潮) =11/2(水) 8:05配信

一部引用:「これでは慶応は“罪を憎む姿勢”にまったく欠けた大学としか言いようがありません」と断じるのは、同大OBで危機管理コンサルタントの田中辰巳氏である。 「加害者も被害者も同じ慶応の学生ですが、被害者の証言は明らかに重大犯罪である可能性を示唆するものです。公益の見地から見れば、被害者を支え、一緒に警察に向かっても良いくらい。捜査が始まるまでは、全面的に彼女をバックアップすることが、コンプライアンス精神を持つ者が取るべき姿勢です。“被害者任せ”ではあまりに保身的かつ無責任で、およそ法学部を設置している大学が行うべき態度ではありません」


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